デフリンピック(2024年4月11日『秋田魁新報』-「北斗星」)

 これから注目度が高まっていくだろう。聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」のことだ。開催は五輪、パラリンピックと同じく4年に1度。来年11月には日本で初めて東京で行われる。周知を図るイベントが先頃、県内でも行われた

 

▼この大会の出場に向け闘志を燃やす県出身者がいる。由利本荘市生まれの岡部祐介選手(36)だ。中学時代から陸上競技の短距離種目で活躍。現在は都内の会社に勤めながら練習に励んでいる。世界の舞台に立つ力をつけ、デフリンピックには1600メートルリレーの日本代表で2度出場。2013年は6位、17年には5位入賞を果たした

▼コロナ禍で1年延期された22年の大会でさらなる高みを目指したが、成績が及ばず惜しくも日本代表入りを逃した。全力を尽くした結果だっただけに現役引退も考えたという。熟考の末に至った思いは「今の自分を、限界を超えたい」

▼そこで大胆な決断をする。専門の短距離に加え、中距離、跳躍、投てきにも取り組む十種競技への転向に踏み切った。仲間の助言を受けながら独自の練習を重ねる一方、治療院に定期的に通い、けが予防を図ってきた

▼努力は実を結び、昨秋の日本デフ陸上選手権で見事に優勝。台湾で今夏行われる世界選手権の日本代表に選ばれた。目標とする3度目のデフリンピック出場へ大きく前進した

▼壁にぶつかっても屈しない。体力や技術だけではなく、新たな道を切り開こうとする心の強さにも目を向けたい。