空き家対策 知恵を出し増加抑えたい(2024年4月11日『新潟日報』-「社説」)

 人口減少に伴い空き家が増え続けている。放置すれば、倒壊の危険性や治安、衛生面の悪化などが懸念される。増加を抑制する手立てに知恵を絞り、地域の活力低下を防がねばならない。

 全国の空き家は総務省の5年ごとの調査で、2018年に過去最高の約848万戸に上った。そのうち349万戸が長期不在などで活用のめどが立っていなかった。

 対策をしないと30年には、そうした物件が470万戸まで増えると推計されている。

 本県では18年時点で、空き家が14万6200戸になり、5年間で1万戸以上増えた。今後も急速な増加が想定される。

 所有者不明の物件のほか、相続放棄による空き家が増えていることも問題だ。

 親が亡くなり、子どもが地元を離れている場合、維持費や固定資産税の負担を嫌ったり、孤独死した人と疎遠だったりして遺産を放棄するケースがある。

 空き家が倒壊すれば、人にけがを負わせ、近隣住宅を壊しかねない。能登半島地震などの大災害では、倒壊家屋が道路をふさぎ、救助や復旧に影響した。

 危険な建物は早急な解体が求められるものの、解体に多額の費用がかかる。最終的には行政が代執行し取り壊せるが、公金支出の負担が生じる。

 政府は昨年末に空き家対策特別措置法を改正した。倒壊の危険性が高い「特定空き家」の前段階となる物件を新たに「管理不全空き家」として、状態が悪化する前に所有者へ活用や撤去を促すようにして対策を強化した。

 市町村は国の指針に沿って作った独自基準に基づき、特定空き家にならないよう所有者に指導し、従わなければ修繕などの具体的な対策を勧告できる。

 自治体は積極的に活用し、空き家の増加抑制に努めてほしい。

 工夫を凝らす自治体もある。

 京都市は26年以降に、全国初の「空き家税」を創設し、売却や賃貸を促す。富山県上市町は「0円空き家バンク」を設け、無償譲渡可能な空き家を取得希望者に紹介している。

 本県は中古住宅再販事業者に改修費など最大300万円補助し、子育て世代などに補助分を値引きし販売してもらう制度を始めた。

 空き家の利活用が進む契機になることを期待したい。

 一方、空き家への窃盗が増えていることは心配だ。

 警察庁の統計では23年の認知件数が8140件で前年からほぼ倍増した。本県では23年が197件で、前年の8・5倍に増えた。

 伸び放題の雑草など外観から空き家と判断され狙われやすくなり、治安低下を招く恐れがある。

 空き家の管理を代行する不動産業者もある。官民でしっかり管理し地域の安全安心につなげたい。