能登半島地震で甚大な家屋被害が出た石川県の6市町が倒壊家屋の「公費解体」を始められずにいる。3市町は開始時期のメドも立っていない。手続きに必要な被害認定調査や
公費解体は被災地の復旧を進めるため、自治体が所有者に代わって家屋を取り壊し、撤去する制度。今回は「半壊」以上が対象で、国が費用の97・5%を、市町が残りを負担する。二次災害の危険性が特に高い約30棟は例外措置の「緊急解体」が行われた。
通常の公費解体は〈1〉家屋の被災程度を調べる被害認定調査〈2〉罹災証明書の申請・交付〈3〉解体工事申請〈4〉解体・撤去――の順で進む。
だが、輪島、
古い木造家屋の倒壊が膨大な数となったうえ、市町職員のマンパワーは全く足りていない。七尾市の担当者は「制度を詳しく知らず、手探り状態」と打ち明ける。
輪島市は証明書の申請7440件に対し、交付は6447件(86・7%)。市内を230エリアに分け、調査が済んだ約80エリアに限定して申請を受け付けているため、交付率は高いが、申請自体がまだできない人も多い。家屋被害は現時点でも1万3000棟余りに上り、さらに増える見通しだ。交付率62・4%の珠洲市も一部地域で申請を制限している。
一方、「一部損壊」などとされた人が「全半壊ではないか」と再調査を求めるケースも増え、6市町で4600件超に上っている。調査をやり直せば、交付はさらに遅れることになる。
こうした中、輪島、七尾、志賀の3市町は解体の段階に進めず、工事の開始時期を「未定」としている。
環境省は「公費解体の経験が豊富な人材は全国的に少なく、人繰りが難しい」(災害廃棄物対策室)としつつ、他の自治体の協力を得ながら職員の応援派遣を続ける方針だ。