過去最多の9人による混戦となった衆議院・東京15区の補欠選挙。
候補者の1人がほかの候補者たちの演説場所で、大音量で批判などを繰り返し、各陣営からは“選挙妨害だ”との声が相次ぎました。
警視庁が候補者に警告を出す“異例”の事態にも。
一方で、候補者側は「表現の自由の範囲内だ」と主張しています。
選挙妨害か?表現の自由か?専門家の見方は…
”異例” 候補者に警視庁が警告
捜査関係者によりますと、候補者が「自由妨害」で警告を受けるのは極めて異例だということです。
何が起きていた?
その後も連日、ほかの候補者たちの演説会場を訪れては、大きな音量で発言を繰り返しました。
30代の女性
「家の中まで大きな声が聞こえてきたので何事かと思いました。率直に、どうしてこのようなことをするのかと思います。もう一方の候補者の声が聞こえないので、投票の判断材料にはならず、残念です」
64歳の男性
「本来なら政策を議論すべきですが、こういった行為は選挙を冒とくしていますし、本来の選挙戦ではなくなってしまっていると思います」
ほかの候補者 “選挙妨害だ”
つばさの党「表現の自由の範囲内だ」
今回の事態をどう見たらよいのか。複数の専門家に意見を聞きました。
憲法学者 “街頭演説は民主主義の根幹”
岩本教授
今回の選挙では候補者が演説日程を事前に告知にしなかったり、演説を中止したりするケースも出ていて、岩本教授は次のように指摘します。
その上で、規制についてはこう話していました。
「候補者の発言内容に国が規制をかけるのは適切ではないですが、行き過ぎた妨害行為については線引きの基準を設け規制が必要になると思われます。参加と討議が行われる場を守れるかどうかが、民主主義を維持できるかどうかの鍵になります」
公職選挙法 専門家 “時代に合った改革必要”
安野専任講師は、候補者がほかの候補者の街頭演説の場に出向いて大音量で発言する行為について、次のように指摘します。
「どこまでが表現の自由でどこまで選挙妨害かは個々の事例によって判断するしかなく、その線引きは本当に難しい。ただ、これまでも偶然、演説場所がかぶることはあったが、故意にやるケースが出てきた」
選挙の自由を妨害する行為について罰則を定めた公職選挙法の規定については、
「暴行や傷害などはそもそも犯罪行為だが、それを選挙に関して行った場合さらに厳しい罰則を科すものと理解できる。一方、演説がかぶっているからといって直ちに排除をすることは取り締まり機関もなかなかできない」
そのうえで、公職選挙法のあり方についてこう話していました。
「紳士的に選挙運動をやっていくという、公職選挙法の前提そのものが、現実的にかなり難しくなっている。取り締まりを強化しても、この法律を運用しているかぎり同様の行為はおそらくおこり続けると思うので、様々な法規を再点検し、時代に合うような抜本的な改革が必要だ」
ネット選挙 専門家 “背景に選挙活動の変化”
議会のデジタル化や選挙に詳しい東北大学大学院の河村和徳准教授は、“選挙妨害”をめぐり議論になっている背景にインターネットを通じた選挙活動の変化をあげています。
河村准教授は「2013年にネット選挙が解禁された時にはホームページやSNSへの投稿が中心だったが近年は動画が容易に配信できるようになった」といいます。
そして「インターネット選挙に反応しやすい都市部の選挙では、過剰や過激な発言など、他者と差別化したいために強めの言葉を使って動画に撮って拡散させるスタイルが強くなる」と指摘しています。
一方で、表現の自由の観点から活動の線引きは難しいとした上で、次のように話していました。
河村和徳准教授
「ネット選挙の解禁から10年以上たって見直す時期に来ていると思う。どうすればより良いことができるのか、誹謗中傷を含めて監視できるのか。本格的に考えなければならない。プラットフォームに対しても選挙の動画の視聴回数を収益に還元させないなどの取り組みが必要だ」
「選挙の自由妨害罪」とは?
公職選挙法225条
一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき
二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀き棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき
三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき
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