3月27日に閉幕した大阪市会で「大阪市路上喫煙の防止に関する条例の一部を改正する条例案」(以下、改正条例)が可決、成立した。2025年4月13日の日本国際博覧会(大阪・関西万博)開幕を控える同年1月施行予定で、以降、市内全域が路上喫煙禁止となる。
【表で見る】大阪市の路上喫煙全面禁止に関するパブリックコメントの結果
改正ポイントとして注目されるのが、第1条「目的」として「受動喫煙の防止」ではなく「国際観光都市にふさわしい環境美化の推進」が挙げられたことだ。理由は「万博の開催を契機に多くの訪日外国人観光客を迎え入れるにふさわしい都市として、喫煙に関する環境整備や町の美化に積極的に取り組むことは重要な課題であるため」としている。
その背景には、屋外における受動喫煙の害について厚生労働省も十分には把握できていないとする市当局の判断もあるようだ。
第2条の「たばこの定義」として、加熱式たばこも新たに規制対象に加えられた。07年の条例改正当時は一般的でなかった加熱式たばこが普及してきた状況を踏まえての変更で、条例の目的である環境美化という観点からも、加熱式たばこのポイ捨てが存在する実情を重く受け止めたものとみられる。
第3条の「市の責務」については、「分煙施設の整備」を追加。理由として、大阪市路上喫煙対策委員会で「今後、市内全域の路上喫煙を禁止し違反者に過料も適用していくことになれば、喫煙者に対してこれまで以上の制限を設けることになる。 市内全域の路上喫煙を禁止する場合、『マナーを守った喫煙』のためには喫煙者数や路上喫煙者の傾向を把握するとともに、既存の民間喫煙所の分布状況などを勘案した上で市域に見合った相当数の喫煙所の確保が必要」という考えが答申されたことが背景であろう。
なお、パブリックコメントでも多くの反対意見があった私有地への規制については、地権者との合意に基づき「路上喫煙禁止区域」と指定し、地権者からの申し出により解除もできるという現実的な内容となった。 こうした改正条例の実効性を高めるには分煙施設の整備が不可欠だ。しかし、市が進めている喫煙所整備計画(改正条例施行までに120カ所の新設と20カ所の改修)は依然として先行きが見えない状況。残された期間でいかに成し遂げていくのか注目される。 (明日へ続く)