政治改革特別委に関する社説・コラム(2024年4月11日)

政治改革特別委 脱法行為も封じ込めよ(2024年4月11日『山形新聞』-「社説」)

 

 「政治とカネ」については、がんじがらめに縛るほかない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆院はきょう11日、参院は12日に政治改革特別委員会を設置し、信頼回復と再発防止に向けた政治資金規正法改正などの本格的な審議に入る。

 政治活動を「国民の不断の監視と批判」の下に置くことが目的の規正法は、政治家がカネの流れを正直に申告するという「性善説」の上に成り立つ。ところが、政治資金収支報告書に記載しない背信行為が横行し、規正法自体も抜け穴だらけである実態が露呈した。

 今回の政治改革論議では、企業・団体献金の見直しと、カネの流れの抜本的な透明化に踏み込まねばならない。収支報告書の不記載などが立件された場合には、議員本人の「知らぬ存ぜぬ」を許さない「連座制」の導入も欠かせないだろう。

 企業・団体献金は野党が主張するように廃止が望ましいが、それが難しいならば少なくとも政党本部に限定すべきではないか。“隠れみの”になってきた資金集めパーティーは、全面禁止も視野に、厳しい制限を検討してもらいたい。

 資金の透明化で看過できないのは、自民党茂木敏充幹事長らが、資金管理団体から使途の公開基準の緩い「その他の政治団体」に巨額のカネを移動させていた問題だ。この操作によって使途明細のない割合は9割を超えるとされ、野党は「支出の隠蔽(いんぺい)」と追及した。こうした疑念を招かぬよう、国会議員が持つ団体は、政党支部資金管理団体の二つに絞ればいい。カネの流れを把握しやすくするため収支報告書のデジタル化も必要だ。

 岸田文雄首相の地元の政財界人が発起人となった就任を祝う会で、収益を首相の政党支部に寄付していたケースも見過ごすわけにはいかない。「任意団体による純粋な祝賀会」と説明するものの、問い合わせ先が首相の地元事務所になっており、野党は「脱法行為」と批判する。任意団体に名を借りた政治家の実質的なカネ集めの手段にもなりかねず、網をかけることが求められる。

 一方、自民党の幹事長に年間10億円前後が支出されている、領収書のいらない「政策活動費」にもメスを入れる時だ。野党が禁止などを主張している中で、一定の使途の公開は避けられまい。同じく領収書不要の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の改革も実現させなければならない。

 忘れてはならないのは、裏金事件の全容解明だ。先日自民党が国会に提出した安倍派幹部への追加聴取結果は極めて不十分だった。岸田首相自らが聴取に乗り出しながら、資金還流復活の経緯も「つまびらかにならなかった」では、そもそも解明する気があったのか疑われても仕方あるまい。幹部の処分で一区切りではなく、再発防止策の審議と同時並行で関係者の証人喚問や国会招致を行うなど、国権の最高機関の使命を果たす時だ。

 自民党からは「政治活動の自由」を大義名分に規制強化に抵抗する声も聞こえるが、ここまでの政治不信を招いたのは、自民党だ。「脱法行為」まで封じ込める厳しい措置も受け入れなければ政治改革と呼べない。

 

政治改革特別委 同時並行で全容解明せよ(2024年4月11日『福井新聞』-「論説」)

 

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治資金規正法改正などの本格的な審議をする政治改革特別委員会が衆院で11日に、参院で12日に設置される。政治活動を「国民の不断の監視と批判」の下に置くことを目的とする規正法は政治家がカネの流れを正直に申告するという「性善説」の上に成り立つとしてきたが、裏金事件では政治資金収支報告書に記載しない背信が横行、規正法自体も抜け穴だらけである実態があらわになった。

 忘れてはならないのが裏金事件の全容解明だ。岸田文雄首相(党総裁)らが追加聴取に乗り出しながら、資金還流復活の経緯も「つまびらかにならなかった」では、そもそも解明する気があったのかさえ疑わざるを得ない。幹部の処分で一区切りではなく、再発防止策の審議と同時並行で、関係者の証人喚問や国会招致を行うなど、国権の最高機関としての責任を全うすべき局面だ。

 一方で、政治改革論議で踏み込むべきは、企業・団体献金の見直しと、カネの流れの完全透明化だろう。収支報告書の不記載などが立件された場合には、議員本人の「知らない」「秘書が」を許さない「連座制」の導入も欠かせない。企業・団体献金については野党がこぞって廃止を主張しており、それが難しいなら少なくとも政党本部に限定すべきではないか。“隠れみの”にしてきた政治資金パーティーに関しても、政治家個人を含め全面禁止にする必要があろう。

 看過できないのは、自民党茂木敏充幹事長らが、資金管理団体から使途の公開基準の緩い「その他の政治団体」に巨額資金を移していた問題だ。これにより使途の明細のない割合は9割を超えるとされる。野党から「支出の隠蔽(いんぺい)」との批判が上がったのも当然だろう。こうした疑念を招かないためには、国会議員が持つ団体を、政党支部資金管理団体の二つに絞ることと、カネの流れを把握しやすくするための収支報告書のデジタル化だ。

 自民党の幹事長に年間10億円前後が支出され、領収書不要の「政策活動費」にもメスを入れなければならない。野党が禁止などを主張しており、一定の使途の公開は避けられない。「調査研究広報滞在費」(旧文通費)の改革も決着させなければ国民の不信感は払拭できない。首相が地元で行った就任を祝う会は、任意団体に名を借りた実質的なカネ集めとの批判が渦巻いており、こうした手法にも網をかけるべきだろう。

 自民党からは「政治活動の自由」を大義名分に規制に抵抗する声もあるが、政治不信を招いた張本人は自民党だということを改めて自覚しなければならない。