無党派層の支持で明暗 当選の酒井氏に2割強 衆院東京15区補選(2024年4月30日『毎日新聞』)

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花束を受け取り笑顔の酒井菜摘氏(右)=東京都江東区で2024年4月28日午後8時17分、三浦研吾撮影
 
 9人が立候補した衆院東京15区補欠選挙では、無党派層の票の行方が勝敗を分けるポイントの一つだった。毎日新聞などの出口調査によると、当選した酒井菜摘氏(37)は無党派層の2割強の支持を得た。次点の須藤元気氏(46)も2割強を得たが、組織票で及ばず。3位の金沢結衣氏(33)は1割強にとどまった。【長屋美乃里、白川徹、小林遥】
 
 
 ◇2割強が酒井氏支持
 調査は28日の投開票日に江東区内の30投票所で、投票を終えた有権者を対象に実施。回答が得られた1569人のうち、4割弱は「支持政党なし」などと答えた無党派層だった。
 立憲民主党の酒井氏は立憲支持層の9割弱、共産党支持層の7割強の支持も得た。候補者を取り下げた共産や社民党の支援を受けて「野党共闘」を展開し、政治資金パーティー裏金事件に揺れる政権への批判票を広く集めた。
 当選確実の一報を受けた酒井氏の事務所では、駆けつけた立憲の長妻昭政調会長が「自民党の政治改革案と裏金の実態解明に落第点がついた。顔を洗って出直せということだ」と語気を強めた。酒井氏は「政治家に対する怒り、変えていかなくてはならないという区民の思いがあった」と振り返った。
 無所属の須藤氏は、無党派層からの支持が最も高く、酒井氏をわずかに上回った。候補者不在の自民支持層の投票先も須藤氏が2割で最も多かったが、組織票はほぼなかったとみられる。
 須藤氏は元参院議員で元格闘家。2019年参院選に立憲公認で立候補し初当選したが、その後、離党した。政党や政治団体の支援を受けない「完全無所属」を強調し、消費減税やインボイス制度廃止などを公約に掲げた。
 須藤氏は地元出身であることをPRし、知名度を生かした選挙戦を展開。自転車で区内を駆け回り、親子連れとの握手や写真撮影に気軽に応じた。「自分には地の利がある。地元でコミュニケーションを深めるスタイルで支持を広げたい」と話していた。落選後には支援者への感謝の言葉を口にした。
 日本維新の会の金沢氏は、自民支持層の2割弱の支持を得たが、無党派層の支持は1割強にとどまった。金沢氏は「私の力不足でこのような結果となってしまった。引き続き地域での活動は続けたい」と述べた。事務所に集まった支援者に感謝を伝えて回ると、涙がこぼれた。
 日本保守党の飯山陽(あかり)氏(48)は、無党派層と自民支持層ともに1割5分程度の支持を得た。選挙戦では憲法9条皇室典範の改正を掲げ、「日本を豊かに、強く」と訴えていた。
 無所属の乙武洋匡氏(48)は小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党都民ファーストの会」の全面支援を受けたが、5位に沈んだ。公明支持層で乙武氏に投票した人は7割強に上った一方、小池氏の支持層では2割弱。自民支持層と無党派層でも、ともに1割5分程度と低迷した。
 28日夜、乙武氏の事務所に小池氏の姿はなかった。4月21日投開票の目黒区長選でも都民ファースト推薦の候補が落選し、小池氏が応援した都内首長選の連勝はストップ。小池氏の影響力の低下を指摘する声もあり、7月の都知事選へ向けた小池氏の対応が注目される。
 今回の投票率は40・70%で、これまで最低だった2017年の55・59%を下回った。在外を含む当日有権者数は43万285人だった。