政治改革特別委 脱法行為も封じ込めよ(2024年4月10日『東奥日報』ー「時論」/『茨城新聞』-「論説」)

 順法精神を踏みにじり、自民党安倍派による巨額の裏金事件の真相解明にも後ろ向きの姿をさらした以上、「政治とカネ」については、がんじがらめに縛るほかない。

 衆参両院は近く、政治改革特別委員会の設置を決め、信頼回復と再発防止に向けた政治資金規正法改正などの本格的な審議に入る。

 政治活動を「国民の不断の監視と批判」の下に置くことが目的の規正法は、政治家がカネの流れを正直に申告するという「性善説」の上に成り立つ。ところが、政治資金収支報告書に記載しない背信行為が横行し、規正法自体も抜け穴だらけである実態も露呈した。

 今回の政治改革論議で踏み込まねばならないのは、企業・団体献金の見直しと、カネの流れの抜本的な透明化だ。収支報告書の不記載などが立件された場合には、議員本人の「知らぬ存ぜぬ」を許さない「連座制」の導入も欠かせないだろう。

 企業・団体献金は野党が主張するように廃止が望ましいが、それが難しいならば少なくとも政党本部に限定すべきではないか。「隠れみの」になってきた資金集めパーティーも、政治家個人を含め、全面禁止を決断してもらいたい。

 資金の透明化で、看過できないのは、自民党茂木敏充幹事長らが、資金管理団体から使途の公開基準の緩い「その他の政治団体」に巨額のカネを移動させていた問題だ。この操作によって使途明細のない割合は9割を超えるとされ、野党は「支出の隠蔽(いんぺい)」と追及した。

 こうした疑念を招かぬよう、国会議員が持つ団体を、政党支部資金管理団体の二つに絞ればいい。同時にカネの流れを把握しやすくするための収支報告書のデジタル化が必要だ。

 岸田文雄首相の地元の政財界人が発起人となった就任を祝う会で、収益を首相の政党支部に寄付していたケースも見過ごすわけにはいかない。「任意団体による純粋な祝賀会」と説明するものの、問い合わせ先が首相の地元事務所になっており、野党は「脱法行為」と批判する。任意団体に名を借りた政治家の実質的なカネ集めの手段にもなりかねず、網をかけることが求められる。

 一方、自民党の幹事長に年間10億円前後が支出されている、領収書のいらない「政策活動費」にもメスを入れるときだ。野党が禁止などを主張している中で、一定の使途の公開は避けられまい。同じく領収書不要の「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)の改革も、いいかげん決着させなければ国民に顔向けできないだろう。

 忘れてはならないのは、裏金事件の全容解明だ。先日自民党が国会に提出した安倍派幹部への追加聴取結果には、あぜんとする。岸田首相自らが聴取に乗り出しながら、資金還流復活の経緯も「つまびらかにならなかった」では、そもそも解明する気があったのかさえ、疑わせた。幹部の処分で一区切りではなく、再発防止策の審議と同時並行で、関係者の証人喚問や国会招致を行うなど、国権の最高機関の使命を果たす場面だ。

 自民党からは「政治活動の自由」を大義名分に規制強化に抵抗する声も聞こえるが、ここまでの政治不信を招いたのは、自民党だ。「脱法行為」まで封じ込める厳しい措置も受け入れなければ政治改革と呼べない。