茂木氏らの資金移動 使途、納得できる説明を(2024年3月23日『秋田魁新報』-「社説」)

 自民党茂木敏充幹事長らが、多額の資金を資金管理団体などから使途公開の基準が緩い後援会組織に移動させており、その支出内容が国民にほぼ分からない状態になっている。資金移動は違法ではないが、使途公開を避ける「抜け道」ではないかとも指摘される。何のために移動させ何に使ったのか、納得のいく説明が求められる。

 政治資金規正法は、国会議員が代表を務める団体や政党支部、寄付金控除の適用を受けて特定の国会議員を推薦・支持する団体を「国会議員関係政治団体」と定め、最も厳しい使途公開基準を設ける。人件費を除く1万円超の支出の報告書記載や領収書の保管が求められ、監査も受けなければならない。茂木氏の資金管理団体もこれに該当する。

 一方、資金が移された後援会組織は「その他の政治団体」という位置付け。消耗品費や事務所費などの経常経費は総額だけの記載でよく、政治活動費も記載義務があるのは5万円以上の支出のみ。監査もない。

 茂木氏の後援会組織の収入はほぼ全てが資金管理団体や政党支部からの寄付。2008~22年で4億円超の資金が移されたが、後援会組織の支出のうち9割超は使途明細がない。

 茂木氏の事務所は「法令に従い適正に処理している」としているが、政治資金規正法の趣旨は政治資金の流れをチェックできるようにすることだ。それを骨抜きにするかのような振る舞いは、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件で高まっている「政治とカネ」に対する国民の不信感を一層募らせかねない。

 棚橋泰文国家公安委員長の関係団体でも同様の資金移動が4億円超に上り、支出の約8割に使途明細がない。新藤義孝経済再生担当相も同様に3億円超の資金を移動させている。

 政治資金規正法は07年に改正され、資金管理団体の収支報告義務が強化されるなどした。棚橋氏の資金移動の規模は、この法改正後に顕著に大きくなっている。

 法改正案を議論した当時の参院特別委員会では、資金移動が使途公開を避けるための抜け道になると懸念する声が上がっていた。それが現実となったような状況では、識者から「法の抜け道が意図的に残されてきたように見える」と指摘されるのもやむを得まい。

 多額の資金移動後の使途が明らかにされていないことを、野党は「新たな裏金疑惑」と問題視している。自民の政治刷新本部でも取り組むべき課題ではないか。

 岸田文雄首相は、今国会での政治資金規正法改正の実現を訴えているが、このような制度の不備を放置した法改正は許されない。政治資金の透明性確保に向けては、裏金疑惑の実態解明に加え、資金移動の問題にも真正面から向き合うことが不可欠だ。