核燃の中間貯蔵 問題の先送りでしかない(2024年4月10日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 原発は、稼働すればこの上なく危険で厄介なものを生み出していく。その現実を忘れてはならない。

 東京電力日本原子力発電が出資する株式会社「リサイクル燃料貯蔵」(RFS)が、青森県むつ市に建設した中間貯蔵施設への使用済み核燃料搬入について、7~9月に開始する計画を明らかにした。

 使い終えた核燃料を原発の敷地外に持ち出して長期保管した例は国内にはまだなく、初の中間貯蔵事業となる。柏崎刈羽原発新潟県)にたまっている燃料を最初に受け入れるという。

 「中間」としているように、これは一時的な対応だ。問題の先送りでしかない。保管期限は50年。以降のことははっきりしない。長期にわたって保管するうちに事実上の処分場のようになってしまわないか、との懸念がある。

 核燃料は、発電に使った後も高い放射線を出し続けるため原発内のプールで保管している。満杯が近づいている原発も多く、電力各社は対応に苦慮している。

 地震でプールが壊れるようなことがあれば、放射能が漏れ出る恐れがある。運転停止中も原発が危険なのはこのためだ。

 岸田文雄政権は「原発の最大限活用」を掲げ、再稼働を進める方針だ。中間貯蔵で当面の行く先を確保しても、根本解決ではないことを直視する必要がある。

 各地の原発に使用済み核燃料がたまり続ける背景には、政府が国策として維持している「核燃料サイクル」構想の破綻がある。

 使用済み燃料には、まだ使えるウランやプルトニウムが残っている。燃料を再処理してそれを取り出し、繰り返し使う構想だ。

 だが、再処理した燃料の利用先として研究した高速増殖炉の計画は、原型炉もんじゅ福井県)がトラブル続きの末、2016年に廃炉が決まって頓挫した。

 現在は、一般原発で使う「プルサーマル発電」を進めている。しかしこれも、実施したのは福島第1原発事故後に再稼働した12基のうち4基にとどまる。

 構想の要として青森県六ケ所村に建設している再処理工場は、大幅に完成が遅れている。

 もし稼働しても、取り出したプルトニウム核兵器の材料にもなる危険物質のため、原発で利用する見通しが立った以上の量を再処理できない制約がある。

 政府と電力会社はごまかしのような対応を続けるのではなく、サイクルの破綻を受け止め、原発推進を根本から見直すべきだ。