今【動画】(2024年3月10日『東京新聞』)

 
 東京電力福島第1原発事故から間もなく13年。リスクの高い使用済み核燃料を地上に移送する準備が進むなど事故収束作業は前進しているものの、壊れた原子炉に近くなるほど現場の作業環境が厳しくなってきました。周辺の被災地では、避難指示解除を解除した地域が増えましたが、暮らしを取り戻した人は多くありません。除染で出た膨大な汚染土の処分という重い課題はそのままです。最新の状況をお伝えします。
 
2024年3月10日付 サンデー版大図解

2024年3月10日付 サンデー版大図解

毎週日曜日の東京新聞の別刷りサンデー版でお届けしている「大図解シリーズ」。新聞見開き2ページで、大型イラストや図表をふんだんに使い、時のニュースや季節の話題を分かりやすく解説しています。紙面の注文は、東京新聞オフィシャルショップから。

 大図解を使って制作者の山川剛史編集委員動画で解説します。
 

原発の事故収束作業の状況は?

 原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しはまだ調査段階で、工法も模索している段階だ。昨年の水中ロボット調査で、1号機圧力容器土台に大きな損傷が確認された。東電は大地震に見舞われても大きな影響はないとするが、計算上の推測にすぎず、さらなる実態解明が求められる。
 昨年8月には、高濃度汚染水を処理した後の水を海洋放出する作業が始まった。今のところ明らかな影響は見つかっていないが、汚染水の新規発生が止まっていないため、放出は30年ほどかかる見通し。長期的な影響監視や、主な残留物であるトリチウムを分離して環境影響を減らすことが重要な課題となる。
 1、2号機の建屋上部には、いまだ計1000体の使用済み核燃料が残る。容易に人が近づけない地上約30メートルの場所に大きなリスクで、これを安定した地上施設に移す準備が進む。ただし、両号機とも高い放射線量と遠隔操縦による作業が大きな課題で、今後も計画通りに進むかどうかは分からない。

◆除染で出た汚染土の状況は?

 福島県内の除染で発生した汚染土は約1380万立方メートルと東京ドーム11個分。新たな避難指示解除に向けた除染が再開され、汚染土はさらに増える。
 原発周りの中間貯蔵施設に搬入された汚染土の処理はいったん終わり、八つの施設に貯蔵され巨大な”汚染土の丘”が広がっている。
 施設は2045年までとされるが、公共工事での再利用も、県外での最終処分も見通しは立っていない。

◆被災地の「復興」の状況は?

 高い放射線量のため、住民ですら立ち入りが制限されてきた帰還困難区域。この2年間で、優先的な除染がされ一部地域の避難指示が相次いで解除された。
 住民の選択肢が増えた点は良い点だが、解除後、帰還あるいは新たに転入した人口はじりじりと増えているものの、住民登録している人のわずか数パーセントしか実際には住んでいない。
 それ以前に解除された地域全体でみても、人口回復は厳しい状況で、各自治体は移住者の呼び込みに力点を移しつつある。