政治資金問題を巡り、自民党の茂木敏充幹事長らが、支出の公開基準が緩い政治団体に、多額の資金を移動させていたことが分かった。違法性は否定しているが、政治資金の使途を隠す脱法行為との非難を免れまい。
茂木氏の資金管理団体は2022年までの10年間で、住所と電話番号、会計責任者が同一の後援会組織に計約3億2千万円を寄付していた。政治資金収支報告書に基づき、立憲民主党の蓮舫氏が参院予算委員会で指摘した。
政治資金規正法は国会議員や候補者が代表を務める資金管理団体や政党支部に対し、人件費を除く1件1万円超の経常経費や政治活動費の支出明細を公表するよう義務付ける。一方、その他の政治団体は1件5万円以上の政治活動費の明細を報告すればいい。
茂木氏の後援会組織はその他の政治団体に当たり、22年には収入のほぼ全額に当たる3250万円を資金管理団体から寄付された。人件費を除く支出総額は1230万円余で、明細が記載されたのは会合費2件の計約17万円、使途公開率は1・3%にとどまる。
同様の会計処理は新藤義孝経済再生担当相、小泉龍司法相も指摘された。3氏は合法だと強調するが、自身の事務所にほかならない後援会に多額の資金を付け替えれば、国民から使途を見えにくくするためと疑われて当然だ。政治資金の収支を透明にする規正法の趣旨に反するというほかない。
07年の規正法改正で国会議員に関係する政治団体の会計基準は厳しくされたが、結局「抜け道」が横行しており、実態把握と是正の責任は自民党にある。必要に応じて法改正にも踏み込むべきだ。
ただ自民党総裁の岸田文雄首相も地元・広島での就任祝賀会を巡り脱法的な資金集めを批判されている。「抜け道」を使って政治資金を扱う党首と幹事長が、改革を主導できるのか甚だ疑問だ。
国会は裏金事件の実態解明と並行して、再発防止に向けた規正法の改正にも取り組まなければならない。「抜け道」を残して問題が再発することにならぬよう、徹底的な議論を与野党に求めたい。