国債利払い費 将来の急増リスク軽視できぬ(2024年4月9日『読売新聞』-「社説」)

 日本銀行のマイナス金利政策解除で金利が上がれば、国の借金である国債の利払い費が膨張し、財政を圧迫する。政府は財政健全化に向け、あらゆる手立てを尽くすべきだ。

 財務省は、長期金利がこれまでの想定より1%上昇した場合、国債の利払い費が、2033年度に追加で8・7兆円必要になるとの試算を公表した。

 既に、24年度当初予算の利払い費は9・7兆円に上る。財務省はこれまで、33年度の利払い費は約25兆円になると予想していた。今回の試算を足すと、33年度の利払い費は30兆円を超える。現状の防衛費の4倍以上の規模だ。

 もともとの長期金利の想定は、25年度に年2・1%、27年度に年2・4%としていた。そこから、さらに1%上振れするのは高めの見積もりだと言える。

 ただ、日銀の植田和男総裁が今夏以降、追加利上げに踏み切るとの見方が出ている。長期金利への上昇圧力が強まる可能性は高い。財政健全化の重要性が増していることは間違いない。

 今後、安全保障環境の悪化に対応する防衛費や、少子化対策の費用にも多くの支出が見込まれる。高齢化による社会保障費の増大も避けられない。そこに利払い費の増加が加われば、自由に使える予算が少なくなってしまう。

 20年度以降、政府はコロナ対策や物価高対策などを名目に相次いで大型の補正予算を編成し、財政支出が急拡大した。国債など国の借金残高は、23年末に日本の国内総生産(GDP)の2倍以上となる1286兆円に達している。

 財政運営を平常時の姿に戻すとともに、無駄な予算を徹底的に洗い出すことが重要になる。

 財政再建に向けては、政府から独立した立場で国の財政運営を監視し、評価する「独立財政機関」を設置するよう求める声が出ている。欧米では多くの国が設けており、日本でも検討に値する。

 歳出改革だけでなく、日本経済を持続的に成長させ、税収を増やす観点からの対策も欠かせない。税収が伸びれば、利払い費が増えても対応の余地が生まれよう。

 海外で稼ぐ日本企業が、海外に留保している収益を還流させて、国内への投資に活用することや、多くの日本企業が抱える内部留保を有効に使うことが大切だ。

 脱炭素やデジタル化、人手不足に対応する省力化など、国内で投資が必要な分野は多い。そこに企業が投資しやすくなるよう、国を挙げて戦略を描いてほしい。