財政健全化推進本部の会合であいさつする本部長の古川禎久元法相(右から2人目)
◆軍事費を減らそうとした高橋是清蔵相を題材に
会合には約40人が出席し、軍事費を削減しようとして暗殺された高橋是清蔵相を題材に財政運営のあり方を協議。本部長の古川禎久元法相は会合後、記者団に「財政規律を守るにはどうしたらいいか議論を深めたい。日本の財政は世界断トツで悪い。財政リスクに政治が向き合う姿勢は極めて大事だ」と強調した。
◆「野放図で無責任はいけない」
国と地方を合わせた債務残高は1200兆円超。今後予想される金利上昇で、借金である国債の利払い費が膨らめば、財政再建をどう進めるかが急務となる。古川氏は「財政は国の安全保障の根幹。野放図で無責任なことはいけない」と大型の財政出動が続く状況にくぎを刺す。
健全化の指標には、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)があり、かつては政府の経済財政運営の指針「骨太方針」に「2025年度のPB黒字化を目指す」と明記されていた。22年度からは安倍晋三元首相ら積極派の反発で目標年次を明示していない。6月にもまとめる今年の骨太で目標をどう設定するかが焦点だ。
◆マイナス金利解除では目立った批判なし
処分前の3日には、党内の積極派が「財政政策検討本部」を開催。安倍派だった本部長の西田昌司参院議員は記者団に「PBを指標にするのは間違い」と指摘した上で「裏金議員の処分と関連づけて積極財政を否定するような話にしたらだめだ」と主張したが、安倍派の多くは裏金事件や処分で身動きが取りづらい。
財政出動とともに「アベノミクス」の柱だった金融政策は3月、日銀がマイナス金利を解除するなど異次元緩和から脱却した。「終了すれば安倍派は黙っていない」(経済官庁幹部)とみられたが、実際には表立った批判はなかった。
◆防衛費膨張に拍車かけた岸田首相
野村総研の木内登英氏は「防衛費増や少子化対策で歳出は増え、2025年度のPB黒字化は現実味が落ちている。達成時期を2030年度にするなど現実的な目標に修正すべきだ。岸田政権は裏金事件で逆風下にあり、財政再建に踏み出すのは簡単ではないだろう」と話す。