骨太方針原案 財政再建の決意見えぬ(2024年6月18日『東京新聞』-「社説」)

 
 政府が2024年度の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」の原案を公表した。コロナ禍や物価高への対応を余儀なくされたとしても、この数年間、野放図な財政支出が目に余る。
 厳しい財政環境といかに向き合うのかを示す骨太方針こそ、財政再建に向けた具体的な道筋を描くべきだが、原案から財政を正そうとする決意は読み取れない。
 岸田文雄首相が議長を務める経済財政諮問会議=写真=がまとめた24年度原案では、国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字化する目標が3年ぶりに復活した。
 PBは政策に使う経費を国債に頼らず税収などで賄えるか否かを示す指標。骨太方針では過去2年、PB黒字化の目標年次が削除されたが、黒字化自体は骨太方針が掲げてきた目標であり、本来の目標に戻ったにすぎない。
 むしろ注目したいのは25~30年度の方針を示す「経済・財政新生計画」の内容だ。財政支出圧力が増す中、この6年間でPB黒字化定着への道筋を示すことが期待されたが、各年度の数値目標は明記されず「後戻りさせない」との具体性を欠く表現にとどまった。
 骨太方針の目的は、各省庁の利害を超えた実効性の高い財政運営を官邸主導で実現することだ。
 しかし、省益優先姿勢は改まるどころか常態化して予算膨張の温床となっている。この状況下で具体性を欠く方針しか示さないのでは省益優先を認めるに等しい。
 国債を中心とする公的債務残高は約1300兆円に上り、国内総生産GDP)の約2・3倍。日銀は大規模金融緩和からの脱却を模索しており、国債の利払いは今後、確実に増える。国債頼みの財政支出は国の負担を増やして財政指標を悪化させ、金融市場では投機の材料にすらなりかねない。
 骨太方針の原案は月内の閣議決定を経て、25年度予算編成の基本指針となる。
 首相は、骨太方針に25年度以降の各年度の数値目標を明記することなど具体的な対応を指示し、財政再建に立ち向かう決意を明確にすべきである。