米大リーグ・大谷翔平選手と棋士の藤井聡太8冠には…(2024年4月7日『毎日新聞』-「余録」)

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ホームランを打った大谷翔平選手=2024年4月3日、AP
ホームランを打った大谷翔平選手=2024年4月3日、AP

 米大リーグ・大谷翔平選手と棋士藤井聡太8冠には、睡眠を重視する共通点がある。大谷選手は飛行機での移動時や、遠征先でも睡眠時間の確保を優先することで知られる。藤井さんは先日出演したテレビ番組で「毎日午後11時くらいに就寝し、朝の8時半や9時に起きることもある」と明かしている

▲型破りな2人にとって、睡眠は力の源泉なのだろう。だが、日本人の睡眠時間は対照的に際立って短い。1日の平均睡眠時間7時間22分は経済協力開発機構OECD)調査33カ国中で最短で、全体平均に比べて1時間以上少ない

▲睡眠時間の確保に向けて政府は、年代別に必要な目安となる「睡眠ガイド」を公表した。成人については「6時間以上」を求めている。短く感じるが、約4割の人がクリアしていないとされる

▲子どもの状況は一層深刻だ。研究者グループの調査によると小学6年は7・90時間、中学3年が7・09時間、高校3年で6・45時間と、いずれも国の目安の下限に達していない。6時間未満の高校生も3割にのぼるという

▲受験勉強や仕事に追われ、スマートフォン利用などで睡眠を削る日常が浮かぶ。片や日本の労働生産性OECD中、30位に落ち込む。「24時間戦えますか」とかつてテレビCMがうたったような発想は、今や競争にマイナスであろう

▲「睡眠を十分取る社会」を実現することが健康のみならず、日本の社会が抱える弱点を克服していくカギになるのではないか。春眠の時節、眠りの価値を考えたい。