大谷翔平口座から6億円超送金 賭け屋に 水原通訳が違法賭博か(2024年3月21日『毎日新聞』)

米大リーグの開幕戦を前に開かれた記者会見を終え、会場を後にするドジャースの大谷翔平(中央)と通訳の水原一平氏(左端)=ソウルで2024年3月16日、AP
米大リーグの開幕戦を前に開かれた記者会見を終え、会場を後にするドジャース大谷翔平(中央)と通訳の水原一平氏(左端)=ソウルで2024年3月16日、AP

 米大リーグ・ドジャース20日(日本時間21日)、大谷翔平選手(29)の通訳を務めてきた水原一平氏(39)を解雇したと発表した。球団は理由は明らかにしていない。米スポーツ専門局ESPNによると、水原氏は違法なスポーツ賭博に関与し、負けによる借金を返済するために大谷選手の資金から数百万ドルを流用した疑いがあるという。米紙ロサンゼルス・タイムズは、賭けるために大谷選手の資金を「盗んだ」とも伝えている。

 大谷選手の代理人が所属する法律事務所は20日、「翔平が大規模な窃盗の被害にあっていることが判明した」とする声明を公表した。同紙によると、西部カリフォルニア州ブックメーカー(賭け屋)に対する捜査当局の調べの過程で疑惑が浮上。ESPNによると、大谷選手の銀行口座からこの賭け屋に少なくとも450万ドル(約6億8000万円)の送金があった。

「大谷が助けてくれた」説明撤回

 19日にESPNの取材に応じた水原氏は、大谷選手に昨年、借金の返済を頼んだことを認め、「あきらかに彼(大谷選手)は不満そうだった。二度とこのようなことがないように助けてくれると言った。私のために支払うことを決めた」と語った。水原氏の説明では、大谷選手が自分のパソコンから分割して送金したという。

 ただ、水原氏は翌日の20日、大谷選手の代理人が所属する法律事務所の「窃盗被害」を訴える声明を受けて再び取材に応じ、説明の大部分を撤回。大谷選手は水原氏のギャンブルや借金のことは知らず、送金もしていないと語り、大谷選手の関与を否定した。その上で「これは明らかにすべて私の責任だ。あらゆる結果に向き合う覚悟はできている」と強調したという。

 米国では多くの州で試合の勝敗などを予想するスポーツ賭博が認められている。だが、カリフォルニア州では合法化されておらず、水原氏が借金を負っていた賭け屋も捜査対象になっていた。水原氏はESPNに対し「これが違法だとは知らなかった。二度とスポーツ賭博はしない」と釈明。「翔平はギャンブルには関与していないことを知ってほしい」と強調した。

 ドジャースのロバーツ監督は21日、韓国・ソウルでの開幕シリーズ第2戦を前に記者会見し、水原氏の解雇について「この件について、いかなるコメントもするつもりはない」と言及を避けた。大谷選手については「試合の準備はできている」と強調し、「我々は野球の試合をするために(ソウルに)来た。今日も良い試合ができるように臨む」と語った。

運転手や練習も 公私にサポート

 水原氏はカリフォルニアの高校、大学を卒業後、2013年に大谷選手がいたプロ野球日本ハムに入団。18年、大谷選手のエンゼルス加入後は専属通訳だけでなく運転手や練習相手なども務め、公私にわたって支えてきた。今オフ、大谷選手のドジャース移籍に伴って水原氏もチームを移り、20日パドレスとの開幕戦でもベンチ入りしていた。【八田浩輔(ニューヨーク)、日下部元美、坂口裕彦(ソウル)、角田直哉】