断水長引く能登地震 過疎地の課題直視する時(2024年4月7日『毎日新聞』-「社説」)

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道路が崩れ、むき出しになった折れた水道管=石川県輪島市で2024年1月17日午後4時33分、添島香苗撮影
道路が崩れ、むき出しになった折れた水道管=石川県輪島市で2024年1月17日午後4時33分、添島香苗撮影

 大規模災害に見舞われた過疎地で、暮らしに欠かせない水をどう確保するか。能登半島地震で浮き彫りになった課題を踏まえた対策が求められる。

 石川県内の断水は最大11万戸に上り、なお6000戸以上で解消されていない。地元に帰れない被災者も多く、生活再建への足かせになっている。

 陸に近い活断層で起きた大きな揺れにより、水道管の破損がいたるところで起きた。1キロ当たりの破損箇所が東日本大震災の7倍に達したとの分析もある。

 水道管の老朽化も被害を拡大させた。国内の水道網は高度成長期に整備され、耐用年数を超えるところが増えている。最大規模の地震に耐える基幹的な水道管の割合を示す「耐震適合率」は、全国平均で4割だ。とりわけ過疎地は低い傾向にあり、今回の被災地の中には1割の自治体もあった。

 人口減の影響で水の消費が減り、過疎地の事業者は収入の低迷にあえぐ。耐震化の工事は水道料金の値上げにつながり、容易に踏み切れないのが実情だ。

 能登半島地震では復旧の遅れが目立つ。被害が大きかった地域はアクセスの不便な半島先端部に位置する。土砂やがれきが道路を塞いだこともあり、作業が滞った。2016年の熊本地震の断水は45万戸に上ったが、ひと月でほとんどが復旧した。

 能登では井戸を掘って生活用水を確保したケースもある。防災向けの井戸の整備も一つの対策になりそうだ。タンク車で水を運搬して過疎地に届けている自治体もある。こうした地域の取り組みを支える仕組みが必要だ。

 自治体同士が連携して水道を運営する動きも出ている。

 岩手県北上市花巻市紫波町の2市1町は13年に事業統合し「岩手中部水道企業団」を設立した。広域連携で事業を効率化するのが狙いだ。老朽化した施設の統廃合を進める一方、耐震化の促進も図っている。

 国は今年度、上水道の所管を厚生労働省から国土交通省に移した。下水道と一体で防災対策を進め、補助金などを通じて自治体への支援を強化する。災害に強い水道インフラの整備と、断水に即応できる体制作りが急務だ。