近畿大学の入学式で祝辞を述べる世耕弘成理事長=6日午前、大阪府東大阪市(南雲都撮影)

 

自民党派閥のパーティー収入不記載事件で離党勧告を受け、離党した世耕弘成参院幹事長に自身が務める近畿大理事長ポストの辞任を求める署名活動は、近畿大の入学式があった6日だけで1万人以上の賛同を得た。

発起人の一人で、近畿大文芸学部の藤巻和宏教授は「政治家としての不誠実な態度は理事長職の適性を欠く」と訴える。

世耕氏は近畿大を創設した弘一氏の孫。一時期を除いて代々、一族が理事長を務めている。世耕氏は、政治活動とは無関係との認識で理事長を続投する方針だ。

式の模様をネット視聴した藤巻氏は祝辞を述べる〝身内〟の世耕氏が「様」呼称で紹介され、違和感を覚えたという。「君臨する存在の大きさを図らずも示した」と指摘する。

今回の事件では、世耕氏が個人として安倍派(清和政策研究会)から還流を受けた金額は平成30年からの5年間で1542万円に達した。令和4年4月に同派会長だった安倍晋三元首相が還流中止を指示したが、7月に安倍氏が死去。翌月に世耕氏ら同派幹部5人が開いた会合で還流の再開を議論した経緯がある。

署名サイト「Change.org」では、「還流問題を解明する情報に接することのできる重要な立場にいながら、すべて秘書に責任転嫁をし、本人は今に至るまで、知らぬ存ぜぬ」などと批判。建学の精神を引き合いに、「理事長として『人格の陶冶(とうや)』を語れるでしょうか?」と資質に疑問を投げかけた。

また藤巻氏によると、今年度から、1年生対象のゼミで世耕氏のメッセージ動画を見て議論する授業回が設けられた。取り扱いに困惑する教員が少なくなく、ある教員は「『このような政治家の映像は見るに堪えない』と退席する学生が出た場合、欠席扱いとすべきなのか。現場に矛盾やゆがみを背負わせる」と反発している。

この日、入学式の会場周辺では「大学の理事長にふさわしくない」などと書かれたビラをまく人の姿があったものの、「政治に詳しくなく、(世耕氏が)誰なのかもよく知らない」(新入生)との声も聞かれ、関心に温度差が見られた。

 

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