■4月8日 桜の開花が例年より遅かった今年は、小学校から大学まで入学式を満開の桜の下で迎える昔ながらの日本の風物詩がよみがえった。入試で延べ14万7000人を集め、総合大学では東のトップ明大に3万人以上の差をつけて11年連続志願者数日本一となった近大では、8800人の新入生が6日に入学式を迎えた。
卒業生で音楽プロデューサーのつんく氏が毎年携わり、華やかなことで知られる同大の入学式。今年は一番注目されたのは、自民党のいわゆる「裏金事件」で離党勧告処分をうけ離党したばかりの世耕弘成前参院幹事長だった。いくら祖父が創設した近大の理事長とはいえ、ふつうなら出席は辞退するのではと思いきや…。
「変化の激しい社会で、自分の立ち位置をしっかりと把握してもらいたい」と祝辞を述べたというから驚く。政倫審などで「秘書がやったこと」「記憶にない」の常套句を自信たっぷりに繰り返し、白々しさが国民の不信感を増幅させた。そんな〝立ち位置不明〟の人には言われたくない言葉だろう。
同じ離党勧告を科せられた塩谷立元文科相は再審査請求を検討しているのに対し世耕氏の反応は早かった。次期衆院選では無所属として和歌山新2区へのくら替えを目指すためとの憶測もあるという。同区は処分前の「引退表明」でおとし前をつけたといわれる二階俊博元幹事長の地元。その後継候補との〝仁義なき戦い〟になるのか。
離党に際して世耕氏は心に邪念のない「明鏡止水」の言葉を繰り返した。実際はくら替えを前に心が混乱し、落ち着かない「意馬心猿」の心境かも。新入生に垂れた立ち位置の教えを自分でもしっかり…といったところだろう。(今村忠)