「マルハラ」(2024年4月6日『新潟日報』-「日報抄」)

日本経済新聞

 

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 「マルを付けちゃだめなの〓」。思わず声に出してしまった。「マルハラ」という言葉を聞いたときだ。マルハラスメントの省略型。通信アプリなどでやりとりする際、文末に句点のマルがあると冷淡さや威圧感を抱く人がいる

▼短文でやりとりを重ねることに慣れた若者にとっては、会話を一方的に打ち切られたような印象を受けるらしい。インターネットで話題に上ったが到底信じられず、職場の後輩に聞いてみた。「確かに冷たい感じがする」というので驚いた

▼そう言われても「句点で終わるのが日本語の作法や決まりじゃないの」という思いは消えない。一方で、年長者の文章に違和感を抱く若者も多いようだ

▼マルハラ以外にも、やたら長文だったり必要以上に親しげだったりする文章は「おじさん構文」「おばさん構文」と呼ばれる。手書きからスマートフォンへと伝達ツールが変わる中で、文章から受けるイメージの世代間格差が広がっているのだろう

▼違う世代とやりとりしていて、年長者が「今時の若い者は」と思うのと同様に、若い世代は「これだから、おじさん、おばさんは…」と思っているかもしれない。お互いさまと済ませられればいいのだが

▼マルハラが話題になり始めた頃、歌人俵万智さんが交流サイト(SNS)に作品を投稿した。「優しさにひとつ気がつく×でなく○で必ず終わる日本語」。世代間で線を引くよりも、時代に合わせて変化する言葉の面白さや、日本語の奥深さへと思いを向けてみたい。