はしかの感染 大人も備え国内流行防げ(2024年4月6日『山陽新聞』-「社説」)

 感染症の「はしか」が世界各地で流行中だ。国内でも2月以降、感染報告が相次ぐ。海外からの帰国者や観光で入国した人から感染したとみられる。大型連休を前に、ワクチン接種を徹底するなど十分備えることが欠かせない。

 はしかの感染者は新型コロナウイルス禍が収束し、国際的に往来が回復した2023年から急増している。世界保健機関(WHO)によると、同年は前年比80%増の30万人以上の感染が確認された。特に欧州での増加が目立ち、前年の60倍超に上る。

 日本は15年、土着ウイルスがいない「排除状態」にあるとWHOに認定された。ただ世界的な流行があった19年は感染者が700人を超えた。23年は28人に抑えたものの、今年は速いペースで増えており、警戒が必要だ。

 はしかはウイルス性の感染症で感染力が極めて強い。新型コロナの患者1人が2~3人にうつすとされてきたのに対し、12~18人に広げる。潜伏期間が約10日と長く、気付かないまま周囲に感染させる危険があることや、空気感染するためマスクでは防げないことは知っておきたい。

 感染すると最初のうちは風邪のような症状になり、数日後に高熱と発疹が出る。合併症として肺炎や中耳炎が引き起こされ、妊婦だと流産、早産のリスクが高まる。まれに重い脳炎を併発するケースもあり、先進国でも千人に1人が亡くなるといわれる。

 決め手となる治療薬はまだないが、2回のワクチン接種で予防は可能だ。また一度かかると生涯、免疫が保たれ、再び発症はしない。現在の感染拡大については、主にアフリカやアジアの途上国でコロナ対策に注力した結果、接種機会を逃した子どもが増えたのが要因とされる。

 コロナの影響で受診控えの動きが広がった日本も似た状況にあると言えよう。はしかのワクチンは公費による定期接種の対象で、1歳時と就学前年に受ける。厚生労働省によると、2回とも接種した割合は20年度以降減っており、22年度は92・4%と、ここ10年で最低だった。

 さらに注意したいのは、現時点で感染者のほとんどが大人という点だ。現行の定期接種が始まる以前は1回接種や任意接種の時期があったため、2000年4月1日以前に生まれた人で感染をしたことがなければ免疫が十分でない可能性は高いという。

 厚労省は2回打っているかどうかを母子手帳などで確認したり、かかりつけ医で抗体があるか血液検査を受けたりして、不十分なら接種するよう呼びかけている。海外に行った場合、帰国後2週間ほどは健康状態に気を付けることも求められる。

 症状を軽視する誤情報が予防接種率の低下を招いているとの指摘もある。流行拡大を防ぐため、「昔の感染症」と侮ることなく大人も子どももしっかりと対策を講じたい。