政治家の構文(2024年2月23日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 交流サイト(SNS)などネット上で見るようになった言葉に「○○構文」がある。文章の構造や組み立てという意味の「構文」ではなく、表現のスタイルやパターンを指す。代表例は「おじさん構文」や「ご不快構文」

▼おじさん構文とは、絵文字や顔文字を乱用し、句読点が多い「おじさんのメールにありがちな」文章のことだ。ご不快構文は、相手が不快になったこと自体を謝罪するだけで、自分の非については何も述べない文章。見覚えがある人も多いのでは

▼政治家版の○○構文もある。小泉進次郎環境相の発言をまねた「進次郎構文」は、同じ言葉の繰り返しや言い換えによる意味の伴わない文章が特徴だった。ポエムとやゆされた独特の言い回しが基になっている

▼そして今、政界ではこんな構文がまかり通っている。「注視していく」「検討を加速する」など、逃げの言葉ばかりを連ねる「岸田構文」だ

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて、与野党で綱引きが続いていた衆院政治倫理審査会の開催が固まった。国会で「説明責任を尽くすよう促している」と繰り返してきた岸田文雄首相に、安倍派幹部らが「説明責任を果たしたい」と応じた形だ

▼だが、還流を受けた議員全員の出席は見通せず、全容解明につながるかは疑わしい。多くの国民が求めているのは不透明なカネが付きまとう古い政治風土との決別なのだが…。政治不信の払拭に向けて「火の玉になる」という決意表明も、岸田構文の一つだったのだろうか。