強盗殺人にまでエスカレートし重大な社会問題となった特殊詐欺が再び変質したのか。それとも新たな犯罪グループの台頭か。
SNSを通じて金を騙(だま)し取る「非対面」詐欺の被害額(約455億円)が昨年、電話による特殊詐欺(約441億円)を超えた。警察庁集計で判明した。
SNS型詐欺は投資を促す詐欺(投資詐欺)と、恋愛感情を抱かせ金を出させる詐欺(ロマンス詐欺)の2種類ある。投資詐欺は昨年1~6月は月85~120件で推移したが7月(204件)を境に急拡大し、12月は369件だった。ロマンス詐欺は緩やかな被害拡大が続く。
投資詐欺はフェイスブックなどで投資家を名乗り、誘う。著名人になりすますケースも多い。ロマンス詐欺はマッチングアプリなどを通じ、外国人の投資家や医師を装って恋愛感情を芽生えさせ、「将来のため資産を増やそう」と投資を誘う。いずれも指定先に送金させ、通話や対面がないままインターネットで完結する犯行である。
背景には株高や投資熱がある。中高年にスマホが定着したのも大きい。被害層は40~60代が7割超だ。8割弱が65歳以上の特殊詐欺と層が異なる。
犯人側には従来の特殊詐欺よりリスクとコストが低減する。ネットで送金まで完結し、電話や現金授受で足がつきにくい。投資名目なので被害単価も上がり、犯行が効率化する。SNSだから標的は探し放題で、接近しやすい。犯人側には好都合な環境がそろっている。
特殊詐欺は、現金奪取の効率化を狙った一部グループが強盗に変質し、死亡者を出す事態に至った。SNS型も変質し台頭した可能性がある。すでに女性警察官や弁護士の関与が判明し事件化した。全国警察は情報共有し、実態解明を急ぎたい。
従来型の特殊詐欺が減っていないのが問題だ。昨年は1万9033件と前年比8・3%増で、被害額も19%増加した。単純計算すると、SNS型と従来型の特殊詐欺で毎日、2億4千万円超が騙し取られているのだ。異様な状況ではないか。
SNSユーザーからは「フェイスブックなどのプラットフォーマーは著名人なりすましの投稿や広告を放置して被害を拡大させた」との批判が強い。監督官庁は厳しく指導すべきだ。