「SNS型」急増 変質する特殊詐欺を潰せ(2024年4月6日『』-「主張」)

 
全国の特殊詐欺捜査を担当する課長らを集めた会議の場で訓示する警察庁の渡辺国佳刑事局長=5年12月13日、警察庁

 強盗殺人にまでエスカレートし重大な社会問題となった特殊詐欺が再び変質したのか。それとも新たな犯罪グループの台頭か。

 SNSを通じて金を騙(だま)し取る「非対面」詐欺の被害額(約455億円)が昨年、電話による特殊詐欺(約441億円)を超えた。警察庁集計で判明した。

 SNS型詐欺は投資を促す詐欺(投資詐欺)と、恋愛感情を抱かせ金を出させる詐欺(ロマンス詐欺)の2種類ある。投資詐欺は昨年1~6月は月85~120件で推移したが7月(204件)を境に急拡大し、12月は369件だった。ロマンス詐欺は緩やかな被害拡大が続く。

 投資詐欺はフェイスブックなどで投資家を名乗り、誘う。著名人になりすますケースも多い。ロマンス詐欺はマッチングアプリなどを通じ、外国人の投資家や医師を装って恋愛感情を芽生えさせ、「将来のため資産を増やそう」と投資を誘う。いずれも指定先に送金させ、通話や対面がないままインターネットで完結する犯行である。

 背景には株高や投資熱がある。中高年にスマホが定着したのも大きい。被害層は40~60代が7割超だ。8割弱が65歳以上の特殊詐欺と層が異なる。

犯人側には従来の特殊詐欺よりリスクとコストが低減する。ネットで送金まで完結し、電話や現金授受で足がつきにくい。投資名目なので被害単価も上がり、犯行が効率化する。SNSだから標的は探し放題で、接近しやすい。犯人側には好都合な環境がそろっている。

 特殊詐欺は、現金奪取の効率化を狙った一部グループが強盗に変質し、死亡者を出す事態に至った。SNS型も変質し台頭した可能性がある。すでに女性警察官や弁護士の関与が判明し事件化した。全国警察は情報共有し、実態解明を急ぎたい。

 従来型の特殊詐欺が減っていないのが問題だ。昨年は1万9033件と前年比8・3%増で、被害額も19%増加した。単純計算すると、SNS型と従来型の特殊詐欺で毎日、2億4千万円超が騙し取られているのだ。異様な状況ではないか。

 SNSユーザーからは「フェイスブックなどのプラットフォーマーは著名人なりすましの投稿や広告を放置して被害を拡大させた」との批判が強い。監督官庁は厳しく指導すべきだ。