交流サイト(SNS)を通じて投資に勧誘する「SNS型投資詐欺」と、SNSで接触した相手に恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害が全国で拡大している。福井県内でも相次ぎ、昨年1年間の双方の被害相談件数は146件で被害推定金額が計約12億4200万円。今年に入って58件、計約2億7700万円(2月末現在)に上っている。憂慮すべき事態だ。感情をゆさぶり、金をだまし取ろうとする巧妙な手口。警戒を強めてほしい。
昨年の全国被害総額は約455億2千万円で、同年の特殊詐欺の被害総額を約14億円上回った。ロマンス詐欺被害の7割超は「2人の将来のため」などとかたった投資名目だった。1月に「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まった。最近の投資ブームや、SNS、インターネット上で投資できる環境が広がっていることが被害急増の背景にあるとみられる。社会的関心の高まりに犯罪グループが乗じている可能性がある。
福井県内の被害状況をみると、SNS型投資詐欺は、偽の投資サイトやアプリから指定された口座に送金した後、連絡が取れなくなるという。昨年被害に遭ったのは131人で、被害推定額は約11億1100万円。年代別では50代が40人で最も多かった。この世代は老後を見据えた資産運用に関心が高い。落とし穴があることを心にとどめてほしい。
ロマンス詐欺は、外国人などをかたりSNSなどでやりとりして恋愛感情や親近感を抱かせ、その後投資などを持ちかけ金銭を振り込ませる手口。昨年の県内の被害者は男性7人、女性8人の15人。いずれも30歳以上で、50代が最も多く5人。被害推定額は約1億3100万円で、1人当たりの最大被害額は約5800万円だった。出会いのきっかけはSNSが10件、マッチングアプリが5件だった。結婚した人の4人に1人は出会いのきっかけがマッチングアプリとの民間調査もある。注意が必要だ。
1~2月には能登半島地震の被災者に対する同情心につけ込んだ極めて悪質なケースがあった。被災地に寄付するという口実を使った詐欺とみられる手口で、県内の女性2人が計約1200万円の被害に遭った。
一度も会ったことがない人から金銭を要求されても安易に応じてはいけない。もうけ話になった場合は詐欺を疑い、警察に相談してほしい。家族間でも話題にし、自己防衛することが大切だ。