◆「なぜこうなったのか…」離党勧告の塩谷立氏
「長期にわたり大規模かつ継続的に組織的な不正が疑われている。派閥幹部の立場にありながら適正な対応を取らなかった政治責任は極めて重い」。党紀委員会の報告を受けた茂木敏充幹事長は4日夕、党本部で安倍派幹部に厳しい処分を科した理由を説明した。
その40分ほど後、安倍派で座長を務めた塩谷氏は議員会館で記者団に囲まれていた。離党勧告と知らされて「非常に厳重な処分で残念。なぜこうなったかの説明を聞きたい」と表情をこわばらせた。
塩谷氏は党紀委に提出した弁明書で、首相らが処分の原案を綿密に検討したことに対して「独裁的・専制的な党運営には断固として抗議する」と強く非難。他にも「処分に合理性がない」と不信の声が相次ぐ。
安倍派幹部らは裏金づくりについて「知らぬ存ぜぬ」と口をそろえる。安倍派で2022年に一度は中止が決まった還流を継続した理由も不明のままだ。
◆「岸田派」の会計責任者も立件されたのに
それでも党執行部は処分の軽重の判断に欠かせないはずの実態解明を棚上げにし、区切りを付けるための結論を急いだ。大量に処分すれば、党内で恨みを買い、世間的にイメージも悪化する。それを避けようと、処分対象を「不記載額500万円以上」に限定した。
首相は「説明責任を見極めて処分する」と言っていたのに個別の事情はほとんど考慮されなかった。金額の線引きは茂木氏が決めたとされるが、党幹部は「根拠はない」と認める。
自民党の党紀委員会を終え、記者会見する(左から)田村副委員長、茂木幹事長、逢沢委員長
岸田派でも元会計責任者が立件されたが、首相は安倍派とは「次元が違う」として都合よく自身を処分対象から除外。茂木氏は、所属議員の多数に不記載があった派閥幹部で対応を怠って大きな政治不信を招いたケースと、不記載額が500万円以上のケースのお手盛りな基準を挙げて「この二つに当てはまらない」と述べ、首相が不問に付された理由を説明した。
◆森元首相を国会招致しないまま
安倍派元会長で今も政界に影響力を残す森喜朗元首相は、裏金づくりが始まった経緯や復活の背景を知りうるとされるが、自民は処分や国会招致に消極的で真相は闇の中。首相には早期の処分決定で局面を打開する思惑があったが、国民の信頼回復にはほど遠い。
中堅議員は今回の処分について「首相と森元首相という二つのピースが欠けている。これでは国民は納得しない」とつぶやいた。
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