復興の財源/事業の必要性広く発信せよ(2024年4月4日『福島民友新聞』-「社説」)

 政府が東日本大震災からの復興に向けた基本方針を改定した。東京電力福島第1原発事故からの本県再生に軸足を置く第2期復興・創生期間(2021~25年度)終了後については「必要な復興事業の実施に支障を来すことがないよう財源を確保する」と明記した。

 一般会計とは別枠で復興予算を管理する震災復興特別会計(復興特会)、被災自治体の財政支援のための交付金制度をそれぞれ継続することも盛り込んだ。

 既存の枠組みで確保した財源はほぼ使い道が決まっている。今後の焦点となるのは、財源の規模をどう確保していくかだ。

 政府は25年度中に事業規模を示すとしている。財源の規模や枠組みが決まらぬままでは、被災地が必要とする事業の停滞や縮小を招きかねない。政府には、26年度以降も本県を支え続ける姿勢を示す上でも、財源の根拠と規模を明確にすることが求められる。

 県などは、今後の復興施策の展開などを復興庁と協議し、必要な事業費を確保できるよう働きかけを続けることが必要だ。

 第1原発周辺は、廃炉の動向、避難指示解除の予定が立っていない区域の取り扱いなど、復興に向けて不確定な要素が多い。25年度までの財源を決めた以降も、新たな帰還の仕組みの創設や福島国際研究教育機構(エフレイ)の設立に伴う、追加の除染や生活環境の整備など、新たな事業が必要となっているケースがある。

 現在予定されている取り組みの事業費を積み上げるだけでは、費用の不足が生じるのは明らかだろう。政府は新たな課題や需要にも予算を割くことが可能な枠組みをつくることが不可欠だ。

 本県は自然災害による被害のみではなく、国が推進してきた原発の事故による被害が大きかった。震災発生以降、能登半島地震などの大規模災害が続く中で、本県の復興に大きな予算が割かれてきたのは、国の政策による人災の側面があったためで、当然だ。

 政府がこれまで投じた復興予算は復興特会と一般会計で、20年度までで40兆円を超えている。その一部は、所得税に2.1%を上乗せする増税で賄われている。

 一つ一つの事業が被災地の再生、被災者の自立に向けてどのような役割を果たしているのかは、被災地以外の人々には分かりにくい面があるのは否めない。県や被災自治体は、それぞれが着実に復興を進めていること、その継続のためには十分な予算が必要であることを県内外にしっかりと発信していくべきだ。