【震災13年 ホープツーリズム】創造的復興目指して(2024年3月26日『福島民報』-「社説」)

 東日本大震災東京電力福島第1原発事故からの復興を肌で感じ、教訓を学んでもらう「ホープツーリズム」が好調だ。2023(令和5)年度上半期(4~9月)に県内を訪れた学校や団体は過去最多に達し、下半期(10~3月)も申し込みが続いている。創造的な復興につなげると同時に、会津地方や中通りを含めた県内全域の魅力発信の弾みにするよう求めたい。

 ホープツーリズムは県と県観光物産交流協会が企画している。上半期の訪問は170団体で、前年度同期を28団体上回った。下半期は公的な施設をはじめ、新たに民間施設を訪問する例も多いという。

 双葉町の浅野撚糸双葉事業所には昨年4月の開所から今年2月までに視察・研修で210団体が訪れている。4千人余りの学生や一般の団体客が復興の最前線で操業を始めた企業の営みに触れる経験は、挑戦を続ける被災地の躍動感を知ってもらう上でも意義深い。

 新潟市立鳥屋野中は教育旅行先に初めて本県を選び、2年生約260人が今月14日、相双地方を訪れた。農業、商業、社会福祉事業関係者の講義を受け、復興に挑む「原動力」や「思い」について学んだ。新潟市内は能登半島地震震度5強を観測した。液状化によって自宅に住めず、避難生活を送った生徒もいる。担当教諭は「逆境に立ち向かう福島県民の姿を通して生きる力を養わせたい」と狙いを説明した。

 生徒は「自分事として向き合う必要がある」「誇れる古里をつくることが大切」などの感想を語っていた。前へ歩む相双地方の被災者の生の声から、多くの気付きと学びを得たに違いない。こうした経験が今後、地域の課題解決に生かせるよう願う。受け入れ側も被災地間の末永い交流のきっかけにしていきたい。

 旅行に学びや体験を求める人は多い。自転車を楽しむサイクルツーリズム、農山漁村滞在型のグリーンツーリズム、自然に親しむエコツーリズム、芸術に触れるアートツーリズムなどは外国人の誘客も見込める。ホープツーリズムを全県下の歴史、伝統、文化、ものづくりを学ぶ「福島ツーリズム」に発展可能な資源を本県は蓄えている。幅広の事業や企画の展開をぜひ検討してほしい。(古川雄二)