農地の「地域計画」 担い手確保につなげたい(2024年4月2日『山陽新聞』-「社説」)

 地域の農業者らが話し合い、目指すべき農地利用の将来像を明確化する「地域計画」の策定期限である来年3月末まで1年を切った。岡山県内の各市町村も策定に取り組んでいるが、進捗(しんちょく)度は市町村によって差があり、全体的には進んでいない状況だ。

 地域計画は、農家の高齢化が進む中、農地の集約などで地域の内外から担い手を確保し、農地を次世代へ引き継いでいくのが狙い。昨年4月施行の改正農地関連法で全市町村に策定が義務付けられた。農地が使われず、耕作放棄地が増えれば景観にも影響する。非農家も含め地元の農地利用への関心を高め、地域計画作りを着実に進めたい。

 地域計画の策定では、10年後の農地の具体的な担い手を一筆ごとに定めた「目標地図」を作成するのが柱だ。農業者や農地の所有者へのアンケートなどで耕作の拡大や縮小、継承といった考えを聞く「意向調査」や、農業者や集落の代表者らによる「協議」などの手順を経ながら、農地の利用について地元の合意形成を図り、目標地図とともに、農地集約の方向性などを示した地域計画を策定する。市町村職員らが協議の場の設定や説明などの実務を担う。

 計画を作る地区の枠組みは、市町村が集落単位などに基づき定める。県内では全27市町村で計427地区が設定されている。県の集計(1月末時点)によると、取り組みを始めているのが全体の約3割に当たる142地区あり、そのうち意向調査を実施中または実施済みが60地区。さらに進んで、協議を実施して目標地図を作成中または策定済みは29地区。最終的な地域計画の作成段階にあるのは2地区となっている。

 各市町村は1~3カ所のモデル地区を設けて先行的に取り組んだ後、他地区へノウハウを展開するなどしている。ただ、農地の所有者が不明だったり、遠方在住で今後の耕作についての意向を把握しづらかったりするなどで、作業が遅れ気味の地区もある。

 県は専門知識を持つ職員を協議の場に派遣し、基盤整備など補助事業の情報を提供したり、農地の貸し借りや集約に関する助言をしたりしている。こうした働きかけを通じ、計画策定をしっかりと後押しすることが重要だ。

 計画を期限内に策定できなくても罰則はない。とはいえ、計画策定が各種補助事業の条件となる可能性があるだけに、市町村は地区の取り組みを促すなど、早期の策定に努めることが求められる。

 計画策定の過程では、非農家の住民が地域農業の実情や課題を知り、理解を深めることにもつながるだろう。耕作放棄地の拡大を防ぎ、食料生産に欠かせない農地が持続的に活用されるよう、実効性ある地域計画を目指したい。