【有機農業】地域ぐるみで産地化を(2024年3月15日『福島民報』-「論説」)

 化学肥料や農薬などを使わず、環境に優しい有機農業を地域ぐるみで推進する動きが県内で広がり始めている。二本松市は、農林水産省が提唱する「オーガニックビレッジ」を宣言し、喜多方市も準備を進める。先進的なモデル地区を多数誕生させ、安全安心な本県の豊かな食材を県内外に発信するよう求めたい。

 農水省は、農業者だけでなく事業者や住民を巻き込み、有機農業の普及を目指す市町村をオーガニックビレッジとして支援している。2022(令和4)年度は全国で55市町村だったが、2023年度は93市町村となった。2030年までに200市町村に増やす目標を掲げている。

 昨年2月に県内で初めてオーガニックビレッジを宣言した二本松市は、5年かけて有機栽培の面積2割増を目指す。取り組む農業者は30人から50人、有機JAS認証者は19人から30人に増やす目標を実施計画に掲げた。学校給食に使用する市内産有機農産物の割合を20%にし、有機コーナーを設けた店舗を開設する取り組みも盛り込んだ。

 実施主体の二本松市循環型農業推進協議会は行政、生産者、流通業者、消費者団体、大学で構成している。目標達成に向け、循環型農業への理解促進が不可欠として周知に力を入れている。宣言1周年を記念した先月のイベントでは、地元の生産者と交流のある有機農業の専門家が講演した。「土」の成り立ちと植物との関係を解説し、来場者の関心を集めた。

 趣味で家庭菜園を楽しむ人は多い。土づくりは菜園の基本であり、講演の趣旨を紹介したり、野菜の育て方を学ぶ場を提供したりして有機農業の裾野を広げてほしい。

 県内の有機JAS認証栽培面積は、2010(平成22)年度時点で301ヘクタールで全国10位だった。東日本大震災東京電力福島第1原発事故で4割減少したが、従事者は2022年度までの5年で55人から73人に増えている。県は研修費や有機JAS認証の取得費用を補助するなどの支援を強化している。

 有機農業は害虫対策や除草に手間がかかり、生産量が少なく販路確保が難しいといった課題も指摘される。有効な栽培法を確立、普及させ、本県農業の一層の活性化につなげるべきだ。(三神尚子)