内需の好循環止めない投資を(2024年4月2日『日本経済新聞』-「社説」)

 
自動車の大幅な生産減が製造業の景況悪化につながった(ダイハツ工業の京都工場=京都府大山崎町
 

 景気は足踏み状態が続くが、内需主導の好循環の流れは途切れていない。日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)からみえる日本経済の姿だ。

 企業は人手不足に対応し、賃上げ継続を軸に人材への投資のほか、生産性向上につながる設備投資に果敢に取り組んでほしい。

 短観では大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(「良い」と答えた回答の割合から「悪い」とした回答の割合を差し引いた値)が昨年12月から2ポイント低下した。指数の悪化は4期ぶり。ダイハツ工業の認証検査不正の影響で自動車生産が大きく減ったためだ。

 大企業非製造業の指数はプラス34と約33年ぶりの高水準を記録したが、小売業などには消費者の値上げ疲れからモノの売れ行きが鈍っている影響もみられた。

 賃金と物価の好循環に向けた動きは続いている。人員の過不足を示す指数は、引き続き歴史的な人手不足の状態を示す。販売や仕入れの価格をみる指数からは非製造業の間で人件費の上昇を価格に反映させる動きがうかがえる。

 設備投資意欲も旺盛だ。2023年度の計画は全規模全産業で前年度比10.7%増と2ケタのプラスを維持した。初めてまとめた24年度は3.3%増だが、当初の計画値としては高水準といえる。

 問題は計画に遅れが出ていることだ。中小製造業などには資材高や人手不足で一部を24年度に繰り越す例もあった。計画の柔軟な運用とともに業務の効率を高め、投資を着実に進めてほしい。

 円安の影響にも注意が必要だ。円相場は3月下旬に一時1ドル=151円97銭と34年ぶりの安値をつけた。短観では企業は24年度の円相場を141円台前半と想定しており、足元の相場よりも円高だ。

 輸出企業には収益拡大の余地が生じる半面、国内の物価高が加速すれば賃金上昇が物価上昇率に追いつかず、消費の停滞が長引きかねない。政府・日銀は円安の多面的な影響を注視し、適切な景気判断や政策運営につなげてほしい。