九州の男女格差 小さな変化を地域全体に(2024年3月26日『西日本新聞』-「社説」)

 九州は男女格差(ジェンダーギャップ)が大きな地域である。最新の研究結果にもくっきりと表れている。

 大学教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が都道府県別の格差指数を公表した。政治、行政、教育、経済4分野の九州7県の順位を見ると、格差の大きい30~40位台が目立つ。

 格差がとりわけ著しいのは政治分野で、熊本、鹿児島、長崎は30位台、佐賀と宮崎は40位台だった。福岡と大分は20位台で、なんとか全体の中位という状況だ。

 国会議員、地方議員ともに男性が圧倒的多数を占め、女性が一人もいない議会が少なくない。長崎は市町村議会の男女比が全国最下位だ。

 一方、鹿児島県議会(定数51)は昨年の改選で女性議員が5人から11人に倍増した。女性の割合は2割を超え、全国上位へ急上昇した。こうした変化の芽を伸ばしたい。

 研究会主査の三浦まり上智大教授は「保守的な地域でも2割は達成可能だが、3割は岩盤」と捉えている。全国で3割を超える都道府県議会は東京だけだ。

 現状を変えるために、まず政党の努力を求めたい。県議会や政令市議会の選挙は政党の公認、推薦候補が多い。各党が積極的に女性候補を立てるだけで、岩盤を崩す可能性は高まるはずだ。

 女性の議員や有志のネットワーク活動にも期待したい。福岡や佐賀、熊本では女性向けの政治塾が開かれ、新人議員の誕生を後押ししている。政治を志す女性が議員の日常や選挙運動のノウハウを知る機会になり、そこで得た人脈は当選後の活動にも役立つ。

 さらに必要なのは男性中心の地域運営や住民の意識が変わることだ。「町内会長や区長は男性」という固定観念は根強い。人口減と高齢化がもたらす地域団体の役員のなり手不足は、古びた慣例を見直すきっかけになるだろう。

 内閣府が女性の立候補や議員活動の障壁を調査したところ、セクハラ、育児や介護との両立が挙がった。いずれも男性が意識を変えれば改善できる課題ではないか。

 そもそも議会は、社会の縮図のように多様な性別、年齢層で構成した方が民意を反映しやすい。

 議会に限らず、社会のあらゆる意思決定の場にも同じことが言える。

 自治体の防災会議は近年、女性の必要性が広く認識されるようになった。被災地の避難所に授乳スペースや生理用品が欠かせないことは、男性だけでは気づきにくい。大地震を経験した熊本県は防災会議の女性比率が全国上位になっている。

 九州は自治体や学校の管理職の比率、県職員の育児休業取得率、共働き家庭の家事・育児に費やす時間など、縮めるべき男女格差が多い。

 身近なジェンダーギャップを知り、男女均等に近づくために研究結果を生かしたい。