男女の格差解消 地域生き残りへの戦略を(2024年3月19日『福井新聞』-「論説」)
福井県は女性に選ばれる地域だろうか。2024年の都道府県版ジェンダー・ギャップ指数が公表された。「1」に近いほど平等を示す指数で、福井県は行政0・372、教育0・583、経済0・417、政治0・182。均等には、ほど遠い現状が浮き彫りになった。人口減少に拍車がかかる中、格差是正の取り組みは女性のためだけではなく、地域が生き残るための戦略と捉えるべきだ。
各分野の指標をみると、福井県は県議や高校校長、県教育委員、企業や法人の社長や役員・管理職、JA・漁協役員などで特に女性の割合が低く、それぞれの指数は全国最低水準。特に経済分野は女性の就業率やフルタイム率が高い半面、管理職などへの登用は進んでおらず、賃金格差にもつながっている。家事や子育ての負担が女性に偏っていることがその一因だ。
北陸新幹線が県内に延伸し東京と直結した。利便性が向上する半面、大都市圏に人が流出する「ストロー現象」が激化する懸念は強い。全国的にも、情報通信業など性差が少ない成長分野の企業が東京圏に集中し、女性が地方から出る傾向が強まっているという。
総務省が1月に公表した23年の人口移動報告によると、福井県は転入者9686人、転出者1万3094人で、3408人の転出超過だった。転出者の内訳は男性7422人、女性5672人。女性の転出超過数は1772人で男性の1636人を上回った。転出者のうち20~24歳が3510人、25~29歳が2612人で20代が全体の46・7%を占める。20代女性の転出は2758人に上る。
若い世代や女性の流出は、人手不足や少子化といった地域が直面する多くの課題の根底にある。多様な勤務形態など働きやすい職場づくりは、男性にとってもメリットがある。家庭でも男性の家事・育児参加が進めば、女性の負担軽減につながる。地域社会でも自治会の役員や行事の担い手不足が深刻化している。性別による分担ではなく、一人一人がいろいろな役割を担わなければ、コミュニティーは維持できない。
企業や地域に求められるリーダー像は変わりつつある。日本航空で女性として初めて社長に就任する鳥取三津子氏は、会見で「多くの仲間に支えられ、議論しながら突破口を見つけてきた。次のステップに悩む女性社員の後押しになればうれしい」と語った。多様なリーダーを認め、活躍できる土壌を培えば、性差や年代差が最も大きい地方政治にも風穴をあけるはずだ。