現場の警察官からリアルタイムで映像送信…110番受理にAI搭載の新システムも

 近年増加している110番の受理件数に対応しようと、広島県警が3月から新たな通信指令システムを導入している。AI(人工知能)を活用した通話音声の文字起こしや、現場の警察官からリアルタイムで映像を送信できる最新機器が整備され、初動対応のさらなる強化が期待されている。(小松大騎)

パトランプの上部に設けられた全方位カメラと、映像送信ができる通信機器を胸元に着けた警察官(広島市中区で)
パトランプの上部に設けられた全方位カメラと、映像送信ができる通信機器を胸元に着けた警察官(広島市中区で)

 県警によると、新システムは3月1日に運用をスタート。以前のシステムのリース契約満了に合わせて、AIなど最新技術が搭載されたシステムに更新した。リース期間は6年間で、総額は約16億1000万円だ。

 導入の背景には110番受理件数の増加がある。コロナ禍後は、2021年に約23万件だった受理件数が増加を続け、23年は過去10年間で最多の約27万件となった。24時間体制で110番を受けている県警通信指令課では、今春の新体制で3人増員したうえで、最新機器を活用することで緊急度の高い110番の取りこぼしを防ぐよう、取り組んでいる。
 

 110番を受けた通信指令課員は、専用のパソコン画面に通報者から聞き取った内容をメモするのが流れだ。新システムではそうした通話内容を、AIが自動で文字起こしして画面に表示することで、課員の聞き漏らしを防止。AIには学習機能があり、広島弁などの方言にも対応可能だ。また110番が集中しやすい災害や大きな事故を想定し、パソコン1台で2回線受理できる機能も搭載させた。

 このほか、110番を受けて現場に駆けつける警察官の通信機器も強化。例えば、警察官が刃物を持つ人物と 対峙たいじ した場合に無線機で応援要請すると、胸に装着した通信機器に内蔵されたカメラの撮影が自動で始まり、現場の状況を通信指令課や各警察署が映像や写真でリアルタイムに共有できるようになった。パトカーには、360度映像を記録できる全方位カメラを取り付けた。

 通信指令課の亀田信二・次席は「現場を指揮する警察官が状況を掌握しやすくなった。通報の受理件数が増加の一途をたどる中で、人員には限りがあるが、最新機器を駆使して迅速な犯人検挙や災害対応につなげていきたい」と話した。