非正規の公務員 働きに見合う待遇こそ(2024年3月29日『東京新聞』-「社説」)

 全国の自治体で働く非正規職員が増えている。地域行政を支える重要な人材だが、待遇は正規職員と格差がある。公務を担う人材を使い捨てるかのような働かせ方は見直し、待遇の改善が必要だ。
 総務省によると、自治体の非正規職員は2023年4月時点で74万2725人。前回調査の20年に比べ6・9%(4万8252人)増加した。05年の45万人超から徐々に増え、今では全国の自治体職員の約4人に1人を占める。国の機関にも約15万8千人いる。
 自治体は人材の多くを、働き方を統一するために20年度に導入された「会計年度任用職員」として雇用している。事務職員のほか保育士、公立学校の教員、給食調理員、公営バス運転手など多岐にわたり、多くは女性が占める。
 被災した能登自治体でも非正規職員は少なくなく、今も懸命に公務を担っているはずだ。
 しかし、待遇は働き方に見合っていない。賃金は正規職員に比べて低く抑えられ、多くは年収200万円前後といわれる。ボーナスに当たる手当の支給拡充に取り組んでいるものの不十分だ。
 雇用も不安定だ。会計年度任用職員の任期は原則1年以下。契約を延長する場合でも回数を定めるなど条件を課す事例が多い。
 東京都の非正規職員として働くスクールカウンセラーのうち、契約更新の上限に達した250人が24年度に継続して採用されないことも分かり、教育現場に動揺が広がっている。
 企業は正規と非正規社員との間に不合理な待遇差を設けてはならないと法律で規定され、待遇に関する説明を求められれば使用者側は対応する義務を負うが、自治体にはそうした法的義務がなく、人事上の裁量が広い。「官民格差」が放置されていいのか。
 非正規職員増加の背景には自治体の財政難があるが、公務を担う人材が安心して働けなければ住民のニーズに応じられず、行政サービスの質はいずれ低下する。
 愛知県みよし市自治体運営に欠かせない存在として、非正規職員の報酬を24年度から最大9・5%引き上げるとともに、非正規職員を段階的に減らす一方、正規職員を増やす。
 他の自治体も先進事例を参考に非正規職員の待遇改善を進めるべきだ。それがひいては住民サービスを向上させることになる。