三重県鈴鹿市役所の市長室には、名誉市民であるホンダ創業者、…(2024年3月29日『東京新聞』-「筆洗」)

 三重県鈴鹿市役所の市長室には、名誉市民であるホンダ創業者、本田宗一郎の直筆の書が飾られている。「鈴鹿の道は世界に通ず

鈴鹿サーキット建設を主導した人である。完成は1962年で、日本初の高速道路となる名神高速道路尼崎-栗東間開通の前年。来たるべき高速時代を見据えて、高速のレースに挑んでこそいい車を造れると信じた。自動車レースの最高峰F1が開催され「スズカ」の名は世界に知られた

▼4月上旬に鈴鹿で開かれるF1日本グランプリの主催者が、来場客に鉄道やバスの利用を呼び掛けている。鈴鹿に通じる道でのマイカー利用は避けて、というお願い。狙いは二酸化炭素排出削減である

▼名古屋などからの直行バスは決勝のある7日、過去最多の便数になる。開幕直前に東京発名古屋行きの貸し切り新幹線「日本グランプリ号」が初めて運行される。車を愛するファンの脱マイカーはうまくいくだろうか

▼電気自動車など脱炭素の技術開発でメーカーがしのぎを削る時代。F1も2年後には化石燃料の使用をやめ環境に優しい合成燃料を導入する。求められる車が変われば、レースも変わるのだろう

▼「すべての道はローマに通ず」。ローマ帝国全盛期に世界各地からの道がローマに通じていたことから、目的を達成する手段、方法は何通りもあることをいう。脱炭素もいろいろやらねばならない。