会計年度の任用 格差と矛盾の解消を急げ(2024年3月1日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 全国の自治体で、非正規職員の数が増えている。総務省のまとめでは2023年4月時点で74万人余に上り、職員のおよそ5人に1人が非正規である。

 背景には、自治体の財政が厳しさを増す中、人件費を抑えつつ市民ニーズに応えるため非正規職員に頼らざるを得ない事情がある。

 正規職員の補助の域を超えて、重い責任が伴う業務を担っている非正規職員もいる。にもかかわらず、正規との待遇の格差があまりに大きい。

 中でも問題なのが、単年度契約の「会計年度任用職員」だ。非正規の大半を占め、パートタイムの女性が多い。結果として女性を安価な労働力として使う構造になっている。総務省自治体は改善を急がなくてはならない。

 今では会計年度任用職員の存在を抜きにして自治体業務を回すのは難しい。県内19市の総数は、23年4月時点で計1万7900人を超え、正規職員の数を2千人余上回っている。

 会計年度任用職員の制度は、非正規公務員の労働条件を統一し、待遇を改善する狙いで20年度に導入された。期末手当が支給できるようになり、その後もボーナスの拡充は図られている。しかし給与水準は低いままだ。

 長野県職員の22年度の平均年収を見ると、女性は男性の74%にとどまる。格差の理由の一つが、非正規における会計年度任用職員の割合の高さだ。女性の約7割を占めている。県人事課は「相対的に給与水準が低い職員が、女性に偏っている」と説明する。

 雇用も安定していない。任期は会計年度ごとの1年で、雇用を継続できたとしても自治体によっては年数に上限がある。年度末を中心に「雇い止め」も起きている。

 一方、カバーする業務は多岐にわたる。保育所や図書館などのほか、多く配置されているのが相談支援の窓口だ。DV被害者を支える女性相談員、生活保護ケースワーカー…。専門知識を必要とし市民の生活や命を守るために欠かせない公共の業務が、雇用の不安定な非正規公務員によってかろうじて支えられている。

 会計年度任用職員の実態は、同一労働同一賃金の原則から外れている。正規との不均衡を解消しなくてはならない。

 正規職員と同じ労働をしているのであれば、正規化への道を開くべきだ。まずは保育士や図書館司書、相談員らについて、勤務実績などを考慮し無期雇用に転換できる仕組みを整えてほしい。