人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
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100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
75歳以上が圧倒的に多い
実数が教えてくれるのは、65~74歳人口と75歳以上人口のボリューム差だ。すべての政令指定都市で75歳が圧倒的に多いという状況になる。
75歳以上の割合が多い北九州市の場合、65~74歳が10万9738人に対し、75歳以上人口は18万1884人。新潟市は9万7201人に対して15万8287人、札幌市は26万362人に対して40万6160人だ。地価の高い政令指定都市では高齢者向け施策の整備が遅れていることは先にも触れたが、病気になりがちな75歳以上の絶対数が増えてくる2035年頃までに整備が進まなければ、高齢者数のピークとなる2042年を待つことなく、この頃すでにパンク状態となる。
政令指定都市を区の単位で捉え直すと、2035年には、大阪市西区24.3%増、大阪市中央区23.2%増と、2015年に比べて2割増となる。福岡市中央区(14.9%増)、名古屋市中区(12.8%増)、神戸市中央区(12.2%増)、札幌市中央区(12.2%増)など、中心市街地にある区で高い人口増加率が確認できる。
高齢化率では、札幌市南区は45.9%となる。地方の山間地であったならば“限界集落”の予備軍と位置づけられそうな水準だ。これ以外では札幌市厚別区(43.4%)、札幌市清田区(41.4%)、神戸市北区(41.1%)、北九州市門司区(41.0%)、広島市安佐北区(40.7%)が4割を超える。35%を超す区も大阪市大正区(39.3%)や札幌市手稲(て いね)区(39.2%)を先頭に27ヵ所にも及ぶ。
75歳以上でも、トップ3を札幌市(南区が31.0%、厚別区27.1%、清田区26.9%)が占める。これらを含め45の区で2割を超える。
一方、川崎市中原区(9.0%)や大阪市中央区(9.3%)は1割を切っており、地区によって大きな開きが出始めるのも2035年頃だ。都市部のモザイク化は各地で広がり、政府や地方自治体の政策づくりはいよいよ一律には進められなくなる。地域の実情に合わせた“オーダーメイド政策”の時代への転換だ。
トップ3を占めた札幌市を例に取ると、75歳以上の住民が集まり住んでいるイメージだが、2035年の札幌市の人口を確認してみると総人口は192万4460人で、このうち高齢者が66万6522人を占める。しかも高齢者の3人に2人が75歳以上(40万6160人)である。年を取って行動範囲が狭まらないうちに、便利な札幌市へと高齢者が集まる「札幌一極集中」の流れが強まってくるということだ。
トップ3の区に限らず、札幌市自体が“北のシルバータウン”といってもよい都市になることが分かる。
札幌市も、札幌市と並んで75歳以上人口のシェアが大きくなる新潟市もそうだが、雪国である。高齢者が多くなった地域では雪下ろしもさることながら、冬場は足元の悪い中で外出せざるを得ないひとり暮らしの高齢者も増えてくる。若者中心、ビジネス優先の街づくりから一刻も早く脱却し、2030年代に向けて都市機能を作り替えなければ、便利であるはずの政令指定都市が住み心地の悪い街に変貌してしまうことだろう。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)