地価の上昇が全国的に広がっている。景気の緩やかな回復で三大都市圏は上昇率を高め、地方圏も県都を中心に回復基調を強めている。ただ今後は利上げや建設コスト高などの影響が考えられ、先行きを注視する必要がある。
国土交通省がまとめた1月1日時点の公示地価は、全体の平均が3年連続で上昇した。上昇地点は全国の6割、三大都市圏は8割を超えた。都道府県単位でみると、前年は上昇と下落がほぼ拮抗していたが、下落の続く県は全体の3分の1ほどに減った。
都市部では、商業地はインバウンド(訪日外国人)の回復やオフィス回帰の動きなどで、三大都市圏が5%、札幌や福岡など地方4都市は9%上昇した。海外マネーが再開発に流れ込む構図が続いているといえよう。住宅地は都心マンション価格の高止まりやテレワークの定着もあり、郊外に上昇地点が広がっている。
地方圏では高齢層が車なしに暮らせる中心部のマンション需要が旺盛だ。県都で下落が続くのは住宅地が甲府など6市、商業地は鳥取など2市に減った。ただ地方圏全体では上昇地点は半数に満たず、回復局面に入って二極化がより鮮明になりつつある。
上昇率が高いのはインバウンドや半導体工場などの需要が大きい北海道や九州に目立つ。住宅地のトップはリゾートの北海道富良野市、商業地は半導体工場に近い熊本県大津町でそれぞれ3割前後上昇した。土地の供給に制約がある地域も多く、中長期的な土地政策で自治体の手腕が問われる。
今の地価はおおむね実需に基づいているとされるが、開発の続く東京都心では一部に割高な取引が出始めたという。地方では空き家が増えるなかで拡大してきた賃貸業向け融資の採算が悪化している。過熱感に注意が必要だ。
東京の不動産市場は低金利や円安を背景に世界の主要都市に比べて有利だとして海外マネーを集めてきた。ただオフィスの大量供給が続くのに加え、マイナス金利解除で資金調達コストが上昇し、残業規制や資材高で建設コストも高まれば、うまみは減る。調整色が強まる海外市場の動向もあり、海外投資家の動きを注視したい。
日経平均株価はバブル期の水準を超えたが、当時二千数百兆円に膨らんだ地価総額の戻りは半分ほどだ。人口減少の影響も大きく、今後の動向に目を凝らしたい。