維新党大会 建設的な政策提案が必要だ(2024年3月26日『読売新聞』-「社説」)

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 日本維新の会が勢いを欠いているのは、様々な不祥事の影響があるだろう。改革を 標榜ひょうぼう するだけで、目新しさが薄れた面も否定できない。

 大衆迎合色の強い政策を転換できるかどうかが、浮沈のカギを握るのではないか。

 維新が党大会を開き、新たな活動方針を決めた。次期衆院選の目標について、従来の「野党第1党の獲得」に加え、与党を過半数割れに追い込むことを掲げた。

 馬場代表は昨年、維新の立場を「第2自民党でいい」と述べ、自民党への協力姿勢を示していた。「与党過半数割れ」の目標を打ち出したのは、政治資金問題で支持を失った岸田政権と距離を置く狙いがあるようだ。

 維新は昨年の統一地方選で地方議員や首長を増やした。読売新聞社の全国世論調査では、立憲民主党の支持率を上回ることも多く、昨年7月には9%に達した。

 ところが、その後は地方議員によるパワハラ、セクハラ問題が相次いだ。大阪選出の衆院議員が地元市議を無届けで公設秘書に兼職させていたことも発覚した。

 大阪・関西万博を巡っては、誘致が決まった当時は維新の実績だとアピールしていたが、建設費の膨張が発覚して国民から批判が出ると、「万博は国家イベントだ」(馬場代表)と、国に責任を転嫁するかのような姿勢を見せた。

 維新の直近の支持率は5%に落ち込んでいる。野党内で埋没する可能性も出てきた。

 維新は「身を切る改革」をスローガンに掲げ、「国会議員定数の3割削減」を訴えているが、有権者が代表に政治を託す代議制民主主義の否定に 繋つな がりかねない。

 公務員の2割削減など「小さな政府」を志向した政策は、大規模災害や感染症の 蔓延まんえん など危機への対応に不安が残る。

 社会保障や安全保障を含め、現実的、建設的な政策を示し、地道に訴えていくことが重要だ。

 次期衆院選での焦点の一つは野党共闘が実現するかどうかだ。

 立民は、政策ごとに野党が連携する「ミッション型内閣」構想を提唱しているが、連立のイメージが湧かない。維新や国民民主党も構想には否定的だ。

 立民と維新の立候補予定者は、全289小選挙区のうち約100選挙区で競合している。

 弱小勢力が争い合っていても票は集まるまい。魅力的で説得力のある政策を掲げ、それぞれの党が地力をつけて有権者に訴えていくことが大切だ。