物流残業規制 運転手の待遇改善急務(2024年3月25日『北海道新聞』-「社説」)

 トラック運転手の残業規制強化まで1週間となった。深刻な人手不足や物流の停滞が懸念される「2024年問題」を迎える。
 道内でも昨年からスーパーが店舗への配送回数を減らしたり、運送会社が長距離路線から撤退したりする動きが出ている。
 関係する企業や団体は、輸送や流通の現場などに混乱が生じないよう努めてもらいたい。
 トラック運転手の年間労働時間は全産業平均より2割長いが、年収は1割ほど低い。
 安全な輸送や人材確保には待遇改善が不可欠だ。それには運送会社だけでなく、荷主や消費者の理解や協力が重要となる。
 広大な北海道の経済社会を支える一方、運転手の長時間労働と低賃金に頼る面が大きかったトラック物流のあり方を、社会全体で変えていかなくてはならない。
 自動車運転業務の時間外労働の上限が、来月1日から年間960時間に規制される。
 この水準でも月平均では過労死ラインとされる80時間であり、規制の強化は当然と言えよう。
 運転手には手取り収入が減ることへの不安があるという。運転手の生活と健康を守るためには、大幅な賃上げが欠かせない。
 歩合制で働く運転手も少なくない。たくさん運べば稼げるため運転手側にも評価する声はあるが、長時間労働につながりやすい。労使の協議で見直してほしい。
 荷主や施設の都合で、荷物の積み降ろしや作業開始前に運転手が長時間待機させられる「荷待ち」が問題になっている。
 政府は荷待ち時間の削減に向けて、物流関連2法の改正案を今国会に提出した。大手の荷主に削減計画の作成を義務付け、物流経営責任者の選任などを求める。
 運送の現場では、運転手が本来の業務ではない商品の陳列などを手伝わされている事例もある。
 国土交通省のトラックGメンなど、関係官庁が連携して監視を強めていくことが肝要だ。
 片道を空で走る「片荷」の解消にも着手する必要がある。
 それには業種を超えた荷主と運送業者の連携が不可欠だが、荷物や輸送に関する情報は企業秘密に関わり、民間任せでは難しい。
 北海道開発局や北海道経済産業局、物流関係業者などが共同輸送や中継輸送などを議論している。取り組みの加速が期待される。
 消費者も送料無料や迅速な再配達を当然視せず、しわ寄せが運転手に及んでいることを考えたい。