<ろんだん佐賀>女性議員の比率 国会続く低調、地方議会に光(2024年3月24日『佐賀新聞』-「論説」)

NPO法人女性参画研究会・さが理事長 山﨑和子さん

 今年は市川房枝さんらが「婦人参政権獲得期成同盟会」を創設して100年目、この運動が実を結び、1945年に女性の参政権獲得が実現して来年は80年になります。

 3月8日の「国際女性の日」(1977年、国連総会で議決)は、「ミモザの日」とも呼ばれ、今盛りの黄色いミモザの花がシンボルとして広く親しまれています。日本では、この日に、男女共同参画担当大臣がメッセージを寄せるのが慣例となっています。

 また、2022年からは、この「国際女性の日」に合わせ、上智大学の三浦まり教授らによる「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」が公表され、今年で3回目となります。この指数は各都道府県の男女平等の度合いを行政、教育、政治、経済の各分野で指数化したもので、そこから佐賀県の傾向や課題が見えてきます。

 今回、佐賀県は審議会等の女性登用などが評価された行政分野で10位、経済の分野では昨年の38位から11位に上昇しており、その要因は、フルタイム率および賃金格差の縮小に加え、新たに指標に加わった就業率の格差が順位を押し上げたとのこと。しかし、教育は32位、政治においては45位と全国でも最下位グループに位置しています。

 最も低い政治分野をみると、県・市・町の女性議員比率13・9%(2023年5月現在)と「黄金の3割」(組織の中でマイノリティーの割合が3割となったときに、組織全体の文化が傾くという理論)には程遠い数字です。

 全国では、国会議員の女性比率は相変わらず低い状況です。一方で、地方議会では女性が躍進しています。彼女たちは、これまでの在り方とは違う「対話により社会の姿を反映する議会」を目指しています。それが表れているのが、22年4月の杉並区の岸本聡子区長の誕生と、翌年の区議選において23区で唯一の女性過半数議会が実現したことです。これには、岸本区長選を支援した女性たちの多数当選がありました。

 この杉並区長選を追ったドキュメンタリー映画が今、各地で公開されていますが、この映画の監督は同区に住んで20年ほどになる女性。「道路拡張計画で自宅が立ち退き対象となり、何とかしたいと考えていたところに、住民が推す岸本さんが出馬する区長選が迫っていた。投票率アップにつながればと選挙活動の様子を動画サイトに上げ始めたのが、映画製作のきっかけです」と語っています。

 さらに、社会学者の上野千鶴子さんは、自身の近著で、「女性差別はいつなくなりますか」と聞かれると、「六千年以上続いてきたものは、そんなに簡単にはなくなりません。あなたと私の目が黒いうちは無理でしょう」と、「だが希望も見えています。若い女の子たちの自分ファーストが社会を変える」と。「彼女たちは、なんで私がセカンドなの、こんなバカげた差別を私が我慢する理由はなにもないと思うようになってきました。ガマンしない娘たちの登場です」と書いています。ズシンとふに落ちます。

 

 先月、亡くなった赤松良子さんは、男女雇用機会均等法の成立に尽力され、「均等法の母」と呼ばれていました。亡くなるまで多くの活動をされており、22年の「さが・女性政治塾」の開講に際しては、「クオータ制を推進する会」の代表として動画で激励のメッセージを頂きました。赤松さんは、「長い列に加わる」という言葉がお好きでした。市川房枝さんら先人の列にご自分も加わり、後輩たちが後に続くのを励ましながら歩きぬけていかれました。ご冥福をお祈りします。