◆泉房穂氏「見えた政治家の資質、投票の参考に」
―今回の政倫審で説明責任は果たされたか。
政倫審は言い訳の場であって全容解明の場ではない。国会で議論するなら偽証罪に問える証人喚問が必要だ。安倍派幹部だけでなく、(安倍派元会長の)森喜朗元首相も偽証罪を前提に話すべきだ。全容解明なくして対策はできない。
今、自民党は全容解明をせずに議員の処分をして、名ばかりの対策を取ろうとしている。このままだと国民は「こんな政治はだめだ」という思いを強めていくのではないか。
―国会や自民党に求めることは。
まずは証人喚問をすべきだが、どうせ「記憶にございません」となる。やはり第三者委員会を設置すべきだ。不祥事をやった人間が自分たちだけで(調査を)やったって、もみ消すだけ。時間をかけて資料や証言を突き合わせて調べないと全容は解明できない。
―関係議員の処分はどうあるべきか。
結局、全容解明せずして処分はできない。「私は(不正・違法行為を)やっていません」という言い分が前提では、どうしても軽い処分にならざるを得ない。事実関係を確認していないのに処分をすること自体がおかしいのではないか。
―どんな再発防止策が必要か。
有権者にも今回の問題を通じて、政策以前の政治家の資質が見えてきたのではないか。秘書や会計責任者のせいにするような対応は、リーダーとして責任を果たす立場にはふさわしくない。投票行動の大きな参考になると思う。(聞き手・小寺香菜子)
◆白鳥浩氏「食い違う証言、疑惑あぶり出された」
―今回の政倫審では「承知していない」「分からない」といった逃げの答弁が目立った。
「何の意味もなかった」という見方もあるかもしれないが、そうは思わない。安倍派や二階派の議員の弁明はテレビ中継などを通じて広く伝わった。多くの国民は「派閥幹部はちゃんとしゃべっていない」という印象を受けただろう。
―とはいえ真相の解明にはほど遠かった。
焦点は三つに絞られたのではないか。一つ目は、この問題がいつから始まったのかという点。二つ目は、2022年4月になぜ還流を「やめよう」という話になったのか、だ。
下村博文元文部科学相は今年1月の記者会見で、22年8月の安倍派の幹部協議で「政治資金収支報告書を『合法的な形』で出す案」が出たと言及した。言葉遣いからすると、幹部の間では当時既に違法性の認識があった可能性がある。
三つ目は、なぜ還流の継続が決まったのかという点だ。政倫審では安倍派の幹部の証言で食い違いが生じている。改めて疑惑があぶり出されたといえる。
―自民党に何を求める。
なぜ関係議員の処分を急ぐのか。必要なのは真相解明だ。4月の(衆院の三つの)補選前に見かけだけの「けじめ」をつけたいのではないかとの疑問もわく。
真相を語る中堅・若手議員が出てきてほしいと思うが、30年前の政治改革で衆院の選挙制度を中選挙区制から(定数1の)小選挙区制に変えた結果として、(公認権を持つ)党執行部を恐れ、発言しにくい雰囲気があるのではないか。当時の政治改革のあり方を問い直す時期に来ている。(聞き手・佐藤裕介)