自民党の青年部・青年局、女性局合同全国大会で、同党和歌山県連主催の懇親会に露出の多い女性ダンサーを招いた問題について頭を下げる鈴木貴子衆院議員。そばで厳しい表情を見せる岸田文雄首相=東京都千代田区の自民党本部で2024年3月16日午後3時34分、毎日新聞玉城達郎撮影
自民党派閥の裏金事件を受け、安倍派幹部だった下村博文氏がきのう衆院政治倫理審査会(政倫審)に出席した。
焦点は、安倍派が2022年に資金還流をいったんやめ、後に復活させたいきさつだったが、今回も真相は明らかにならなかった。
会合に出た幹部全員が復活決定の経緯ははっきりしないと言う。そんなことがあり得るのか。もはや虚偽答弁が偽証罪に問われる証人喚問で追及するほかない。
政倫審の前日には自民党大会があった。岸田文雄首相は、裏金関係議員の処分について指示したと表明したが、捜査終結から2カ月近くたってようやく検討する緊張感のなさはあきれるばかりだ。
再発防止についても議員処分を厳格化する党則改正を決めただけで、法改正の具体案を自民党はいまだに提示できていない。
首相の指導力の乏しさと統治不全は目に余る。これ以上、真相究明を先送りし、日本の民主主義を停滞させるのは許されない。
下村氏は安倍派の会長代理、事務総長を務め、1月の記者会見では還流について「個人の政治資金パーティーに上乗せして、収支報告書で合法的な形で出す案もあった」と具体的に語っていた。
しかし政倫審で下村氏は、還流の復活について「誰がどう決めたのか全く承知していない」と語り、資金還流の代替案についても「誰が最初に言ったのか覚えていない」と繰り返した。
下村氏は、派閥に絶大な影響力を持つ森喜朗元首相とは距離があるため、野党からは実態解明のキーパーソンと目されていたが、これでは核心に近づくどころか、迷宮は深まる一方だ。
首相は先週、政倫審の聴取検討対象について「森氏も入ると認識している」と述べた。やはりなぜ裏金づくりは始まったのか、森氏に国会で聴くほかあるまい。
この期に及んでもなお、自民党に際立つのは身内への甘さだ。
党則改正による議員処分は「政治的・道義的責任」が認められる時との条件付きで、お手盛りの判断に陥るのが目に見えている。
今月には党和歌山県連の会合に露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた責任問題も発覚した。緩み切っていると言わざるを得ない。
自民党は裏金に関係した議員計80人規模を4月上旬にも処分する方向で調整しているという。
これで幕引きには到底ならない。実態解明から逃げていては信頼回復は遠のくばかりである。
下村氏、政倫審出席 深まる疑惑、喚問不可避(2024年3月19日『秋田魁新報』-「社説」)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会に安倍派会長代理を務めた下村博文氏が出席した。いったんやめることになっていた同派の資金還流を復活した決定への関与を否定。一足早く政倫審出席の同派幹部らと同様、責任回避の答弁に終始した。
岸田文雄首相は17日の自民党大会の総裁演説で「説明責任の貫徹を関係議員に促す」と述べていた。貫徹という言葉から程遠い政倫審での説明が続き、疑惑はさらに深まった。野党が求めている参考人招致や証人喚問がもはや不可避ではないか。
これまで衆院で岸田首相と安倍派、二階派の幹部、参院で安倍派幹部ら計9人が出席して政倫審が開かれてきた。自ら強く希望したという下村氏はそれに続く10人目の出席だった。
安倍派は長年、パーティー券販売ノルマを超えた売り上げを議員側に還流、政治資金報告書に記載せずに裏金化してきた。この慣行の取りやめを2022年4月、会長だった安倍晋三元首相が指示した。その復活が誰の提案だったのかも焦点だ。
これまでの幹部らの説明では安倍氏死去後の22年8月、下村氏を含む幹部4人が協議の場を持った。その際に復活を固めたのかどうか、幹部間の説明に食い違いが浮かび上がっている。
下村氏は今年1月、協議の際に還流分を議員個人のパーティー収入に上乗せし「合法的に」処理する案が出たと明らかにしていた。ところが政倫審では違法性の認識を否定。提案者が誰かは記憶にないと繰り返した。
共同通信社が今月上旬に行った世論調査の内閣支持率20・1%、党支持率24・5%は12年の自民党政権復帰以降、最低水準。その最大の理由は裏金事件であり、真相究明が一向に進まないことにある。
先の衆院政倫審に出席した安倍派と二階派の幹部計5人について「説明責任を果たしていない」との回答は9割を超えた。残念なことに、その後の参院政倫審、下村氏の衆院政倫審出席でも真相解明へ前進する説明がされたとは到底思えない。
岸田首相は自民党大会で党紀委員会の議論を経て関係者を処分すると発言している。しかしその党紀委の委員長に政治資金収支報告書への不記載があったため、委員長交代後の処分になるという。これが今の自民党の実態だ。
そもそも疑惑の真相がうやむやのままでは責任の所在を明確にできず、処分の重さを決められないのではないか。岸田首相は政治資金規正法改正の今国会での実現を訴えているが、これでは実効性のある改正などできるはずはない。
政倫審では説明が尽くされるどころか、疑惑を深めている。偽証罪に問えない政倫審の限界が明らかだ。本気で政治改革を進めようとするのなら、証人喚問に踏み切るしかない。岸田首相の決断が求められる。
自民党大会 改革の決意、実行で示せ(2024年3月19日『茨城新聞』-「社説」)
自民党改革の決意を繰り返し訴えても、不祥事が度重なる中で、もはや信用されまい。党総裁の岸田文雄首相には、国民が納得する改革の実行こそが求められている。
自民党が東京都内で党大会を開いた。演説した岸田首相は、派閥の政治資金パーティー裏金事件を謝罪し、「先頭に立って党改革、政治改革を断行すると改めて約束する」と表明。前日の全国幹事長会議では「命懸けで党再生に努力したい」とも述べた。
裏金事件を受け自民党は党則など内規を改正した。その中で政治資金規正法などに抵触する疑いが生じた国会議員は「説明責任を果たさなければらない」と明記。政治団体の会計責任者が規正法違反で逮捕、起訴された場合、議員に離党勧告処分を下せるとし、有罪が確定すれば最も重い除名処分も行えるとした。
首相は党大会で、自身が本部長を務めた党政治刷新本部の「成果の第一歩だ」と強調したが、説明責任は内規に書かずとも国会議員が常に負っているものだ。
その自覚に欠けているが故に、国会の政治倫理審査会で安倍派幹部らが巨額の裏金還流の経緯に関し「知らぬ存ぜぬ」の態度を取ったのではないか。党大会後の衆院政倫審で弁明した下村博文元文部科学相も同じだった。
規正法さえ守らなかった議員が明文化したからといって内規に従うか疑わしい。「説明責任の貫徹を促す」と明言した首相の指導力が問われている状況に変わりはないと認識すべきだ。
厳格化した議員処分の在り方についても同様のことが言える。
会計責任者の有罪確定に伴う離党勧告や除名の処分に対し、「議員が関与するなど政治不信を招く政治的、道義的責任があると認められる時」と前提を付けた。
政倫審では、安倍派幹部らがそろって裏金還流への関与を否定した。それ自体、信じ難いが、今後発生した事案で、議員が不関与を主張した場合、処分に踏み切ることができるのか。
処分の認定には慎重な審査が必要とはいえ、言い逃れを許すわけにはいかない。処分の当否を最終的に判断するのは首相であろう。首相は断固たる姿勢で臨み、出した結論について説明を尽くさなくてはならない。
その試金石となるのが裏金事件での安倍派幹部らの処分だ。首相は党大会で「厳しく対応する」と言明した。改正した党内規の適用外だが、相応の処分でなければ、首相が訴える自民党改革の決意は言葉だけと早々に受け止められよう。
続発する「政治とカネ」問題の再発防止には、党内規のように恣意(しい)的運用の懸念がない政治資金規正法の改正が欠かせない。首相は「今国会で実現する」としているが、党大会でも具体策には踏み込まなかった。
国会論議では、法律上も議員に連帯責任が課せられる連座制の導入、使途公開の義務がないため裏金化が指摘される政策活動費の透明化の是非などが焦点になっている。これらに関わる法改正への取り組みで、首相の本気度を測れるはずだ。
この間、自民党和歌山県連が昨年11月に主催した会合に、露出の多い衣装の女性ダンサーを招いていたことが判明した。言語道断である。同席しながら傍観した国会議員の役職辞任で済まさず厳格に処分すべきだ。
「裏金渦中」の自民党大会 けじめなくして信頼なし(2024年3月19日『毎日新聞』-「社説」)
疑惑の解明に正面から取り組もうとせず、関わった議員の処分さえしないままだ。これで出直せるわけがない。
派閥裏金事件で国民の政治不信が高まる中、自民党がきょう党大会を開く。「新しく生まれ変わる覚悟で、解体的な出直しを図る」との運動方針案を採択する。
だが、肝心なことが置き去りだ。党大会までに決定するとされていた関係議員の処分が先送りとなっている。
裏金作りに関わった82人全員を政治倫理審査会に出席させ、明らかになった実態に即して処分を下すのが筋だろう。
ところが、安倍派幹部が当初公開を拒んだため、開催がずれ込んだ。出席したのは、野党が求めてもいない岸田文雄首相を含め9人にとどまり、「一切関与していない」などと繰り返すばかりだ。
検察の捜査終結から2カ月たっても結論を出せないようでは、党総裁として指導力も統治能力も欠いていると言わざるを得ない。
党大会では規約が改正される。政治資金規正法違反で政治団体の会計責任者の有罪が確定するなどした場合、議員本人に「除名」か「離党勧告」の処分を科せるようにする。
だが、党内ルールを作っただけでは実効性が担保されない。法改正が不可欠だ。
野党や公明党は、会計責任者だけでなく議員本人の責任も問える「連座制」を導入する規正法改正を求めている。企業・団体献金の禁止や使途の記載義務がない政策活動費の透明化など、法の「抜け穴」をふさぐ抜本改正に取り組む必要がある。
国民からの不信の目は自民全体に向けられている。和歌山県連が主催した若手議員の懇親会に露出の多い女性ダンサーを招いた問題では、非常識な感覚と規律の緩みが露呈した。関係議員が離党や役職辞任したのは当然だ。
首相は施政方針演説で「国民の信頼なくして政治の安定はない」と強調した。物価高や少子化などへの対策を打ち出すが、今のままでは何を訴えても国民の心に響かない。
失われた信頼を取り戻すには、まず「政治とカネ」の問題にけじめを付けなければならない。
自民党が定期党大会を開いた。岸田首相は演説で、派閥の政治資金規正法違反事件を踏まえ「信なくば立たず。先頭に立って党を立て直す」と訴えた。大会前日の全国幹事長会議では「命懸けで党再生に努力する」と強調した。
東京地検の捜査が終了してから間もなく2か月となるが、還流の経緯など詳細は不明だ。規正法改正についても、自民党の具体案は示されていない。手をこまねいている間に、岸田内閣だけでなく、党の支持率も落ち込んだ。
地方議員からは、党執行部に対する不満が噴出している。連立を組む公明党の山口代表から「2012年に政権奪還して以来、最大の試練に直面している」との指摘が出たのも当然だろう。
首相は党大会で、茂木幹事長に対し、事件に関わった議員の処分を指示したことを明らかにした。多額の「裏金」作りが疑われている安倍派の議員を念頭に処分する考えのようだ。
だが、首相が昨年まで10年以上率いていた岸田派でも3000万円の不記載が見つかり、元会計責任者が立件されている。
首相は、岸田派の不記載について「事務的ミスの積み重ね」と説明して悪質性を否定しているが、安倍派と岸田派で、何がどう違うのか。処分を行う際には、理由や根拠を明確にすべきだ。
首相は改革への意欲を繰り返し語っているが、具体策を聞かれると曖昧になり、どこか人ごとのような印象を与えている。今回の危機は、安倍派が招いたと考えているのかもしれないが、そうした姿勢では信頼は回復できまい。
4月に行われる衆院東京15区、島根1区、長崎3区の3補選で、自民党は勝算が見込めないとして、島根1区以外、不戦敗とすることを検討しているという。与党としてあまりにもふがいない。
一方、衆院政治倫理審査会では、安倍派の事務総長だった下村博文元文部科学相が弁明を行ったが、還流に関する新たな事実は出てこなかった。派閥の会長だった森喜朗元首相の関与についても「承知していない」と明言を避けた。
衆参両院の政倫審に出席した安倍派の元幹部は、これで6人となったが、誰もが異口同音に還流への関与を否定している。政倫審での実態解明は限界だろう。
自民は政権党の信頼取り戻せ(2024年3月19日『日本経済新聞』-「社説」)
自民党大会で政治資金問題を踏まえた対応などについて演説する岸田首相(17日、東京都港区)
自民党を見つめる有権者の視線は極めて厳しい。主要派閥の裏金問題が発覚し、長期政権の緩みをうかがわせる不祥事も多発している。事実解明と関係者の責任追及を徹底し、政権党としての規律と失われた信頼を取り戻せるのか。まず問われるのはその一点だ。
自民党は17日、都内のホテルで党大会を開いた。派閥の政治資金パーティー収入の還流と収支報告書への不記載が多数見つかり、政府・与党に対する批判が強まるなかでの開催となった。
岸田文雄首相(党総裁)は演説で「一部の派閥の資金問題によって深刻な政治不信を引き起こしている。深い反省の上に私自身が先頭に立って党改革を断行する」と述べた。関係者の処分と再発防止に向けた政治資金規正法の今国会での改正にも言及した。
派閥の裏金事件では、国会議員3人と安倍、岸田、二階3派の会計責任者らが立件された。問題の発覚から数カ月をへても資金還流の実態解明は進まず、関係者の処分も遅れている。党執行部は強い危機感を持って指導力を発揮すべきだ。
自民党は運動方針に「これまでの『派閥』から脱却し、二度と復活させない」と明記。党の規約や指針「ガバナンスコード」も改正し①会計責任者が逮捕・起訴された場合は議員本人も処分可能とする②政策集団や党内グループの影響を受けず多様な人材登用を進める――との原則を打ち出した。
自民党はこれまでも世論の批判を受けるたびに、脱派閥や政治資金の透明性向上などを掲げた。だが「政治とカネ」や選挙違反に絡む事件は後を絶たず、政治家の資質を疑わせる不祥事での党幹部や閣僚らの辞任も続いている。
衆院では18日に安倍派の下村博文元事務総長が政治倫理審査会に出席したが、資金還流や不記載が長く続いた経緯の解明は進まなかった。自民党は関係者の責任追及と再発防止への取り組みを加速し、自浄能力を示したうえで政権党の役割を果たしてほしい。
自民党大会 信頼回復の行動を早急に(2024年3月19日『産経新聞』-「主張」)
自民党は党大会を開き、派閥パーティー収入不記載事件を受け、解体的な出直しを図るとする運動方針を採択した。
岸田文雄首相(党総裁)は「先頭に立って党改革、政治改革を断行する」と語った。決意だけでなく、結果を示す必要がある。
国会はこれまで政治倫理審査会を開いてきたが、安倍派が資金の還流中止を決めながら、その後復活させた経緯などは明らかになっていない。
首相は処分の結論を出すよう党に指示した。東京地検特捜部が立件したのは1月である。いまだに処分を決めていないのは、遅すぎる。全国幹事長会議で地方組織から、けじめをつけていないことに不満が相次いだのは当然だろう。
対象は安倍派幹部だけでなく、元会計責任者らが立件された二階、岸田両派幹部も免れまい。国民が納得する処分を早急に下すべきだ。
党大会では党則や規律規約などを改正し、会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕や起訴された場合、国会議員に離党勧告を含む処分を下せるようにした。同責任者の有罪が確定した場合は除名などを行う。
だが、これでは不十分である。再発防止の実効性を確保するには、規正法を改正し、国会議員も責任を負う連座制を導入することが必要だ。実態を解明せず、処分や再発防止策で甘い対応に終始すれば、信頼を取り戻すことは難しい。
一方で国政の課題は多く、足踏みしている余裕はない。首相は安定的な皇位継承策について「皇族数確保のための具体的方策を取りまとめ、国会における検討を進める」と述べた。男系(父系)継承という大原則に基づく解決策をまとめなければならない。
憲法改正に関しては運動方針に、令和6年中の国民投票の実施を目指すとした。衆参の憲法審査会は今国会で一度も開かれていない。改憲原案の作成に主導的役割を果たしてほしい。
外交・安全保障も重要な課題だ。運動方針に記した「台湾有事が現実の課題」との認識のもと、防衛力の抜本的強化を確実に進めることが欠かせない。
最大与党の自民は保守の矜持(きょうじ)を示し、国家国民のための政策を遂行する責務がある。そのための信頼回復が急務だ。
自民派閥の裏金 政倫審では解明できぬ(2024年3月19日『東京新聞』-「社説」)
自民党派閥の裏金問題。衆参両院で政治倫理審査会が計4回開かれたが実態解明に至らず、疑問は深まった。政倫審の限界が明確になった以上、偽証した場合に罪に問われる証人喚問が必要だ。
18日の衆院政倫審では、安倍派元事務総長の下村博文元文部科学相が「派閥の会計にまったく関与していない」と述べた。これまでの政倫審でも塩谷立、西村康稔両氏ら同派の歴代事務総長4人と参院側会長の世耕弘成氏が関与を否定している。
幹部6人全員が、派閥に加えて自身の事務所の会計も「知らぬ、存ぜぬ」とは耳を疑う。
裏金問題の焦点の一つは、安倍派から所属議員への資金還流を巡り2022年4月、同派会長だった安倍晋三元首相の指示で中止を決めながら、継続した経緯だ。
還流中止の指示は違法性の認識があったからにほかならない。
しかし、下村、塩谷、西村、世耕の4氏は安倍氏死去後の22年8月に協議したことは認めたが、この場で資金の還流継続を決めたかどうかの説明は食い違う。
違法行為を継続した経緯について、同派幹部が口を閉ざすのは責任逃れとの非難を免れない。
一部の幹部は裏金づくりは二十数年前から行われていたと述べたが、誰の指示で始まったのかは不明だ。1998~2006年に断続的に会長を務めた森喜朗元首相に事情を尋ねるしかあるまい。
自民党は17日の党大会で党則などを改正し、「政治とカネ」を巡って厳格な議員処分を可能にしたが、改正前の内規でも疑念を持たれた議員は「丁寧な説明を行う」と定めていた。
党の調査に不記載・虚偽記入を認めた衆参82議員のうち政倫審への出席は計9人にとどまる現状を見れば、党則や内規で定めた程度では実効性に乏しく、法律で厳罰化することが欠かせない。
岸田文雄首相は今国会中に、裏金に関与した議員らを処分し、政治資金規正法も改正すると明言した。それらの実現には国会での実態解明が必要であり、首相は関係者の証人喚問に応じるべきだ。政倫審での幕引きは許されない。
政倫審の限界/裏金の実態解明に程遠い(2024年3月19日『神戸新聞』-「社説」)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、安倍派の会長代理を務めた下村博文元文部科学相がきのう、衆院の政治倫理審査会に出席した。
疑惑解明のキーパーソンとみられ発言が注目されたが、新たな事実はなく、説明責任を果たしたとは言い難い。政倫審の限界を露呈した。参考人招致や偽証罪にも問われる証人喚問を検討すべきだ。
安倍派ではパーティー券のノルマを超えた販売収入を議員に還流し、政治資金収支報告書に記載せず裏金化していた。2022年4月に会長だった安倍晋三元首相の指示で資金還流の中止を決めたが、安倍氏死去後の8月に開かれた幹部協議後に復活した経緯がある。事務総長経験者の下村氏は協議に出ていた。
焦点は幹部の違法性の認識や、誰が復活を決めたのかだ。
今月1日の衆院政倫審で、同協議に出席した西村康稔前経済産業相は「結論は出なかった」と述べた。一方、派閥座長を務めた塩谷立元文科相は「話し合いで継続になった」と説明し、食い違いが生じていた。
14日の参院政倫審で弁明した世耕弘成前参院幹事長は「誰が決めたのか私も知りたい」と人ごとのように繰り返した。改選対象の参院議員にパーティー券販売収入の全額を還流する独自の運用に関しても「承知していない」と関与を否定した。
下村氏は還流の仕組みについて「関与したことはなく、相談も受けていない」と述べた。22年8月の幹部協議で資金還流に代わり議員個人のパーティー券を派閥が購入する案が話し合われたとしたが、誰の発案かは「覚えていない」とかわした。疑問は何一つ解消していない。
20年以上前からとされる裏金づくりが始まった経緯も、明らかにならなかった。政倫審で野党は、かつて派閥を率いた森喜朗元首相を国会に招致するよう訴えてきた。下村氏は森氏の影響について「全く承知していない」と述べたが、経緯を知り得る森氏への聴取は不可欠だ。実際に裏金を管理していた安倍、二階、岸田派の会計責任者にも説明を求める必要がある。
自民は17日に党大会を開き、裏金事件を受けて党則や規律規約などの改正を決めた。会計責任者が刑事処分された議員への処分の厳格化が柱だが、今回の事件は改正による処分対象とはならない。岸田文雄首相は関係議員に「説明責任を貫徹すべく引き続き促す」と述べたが、その言葉がむなしく聞こえる。
裏金議員の処分 解明なき幕引き許せぬ(2024年3月19日『中国新聞』-「社説」)
自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、安倍派、二階派の議員80人規模を4月上旬にも処分する方向で調整に入った。党の処分で最も重い「除名」と、それに次ぐ「離党勧告」は見送る方針という。
肝心な裏金づくりの経緯や責任の所在は一向に解明されていない。目先の処分で批判をかわす狙いが透ける。
急落する党支持率にこれで歯止めがかかるほど「政治とカネ」問題への国民の不信感は小さくないだろう。党や派閥の幹部自身が襟を正し、裏金事件の実態を解明しなければ、信頼回復へのスタートラインにすら立てまい。
おとといの自民党大会で岸田文雄首相は「私自身が先頭に立って自民党改革、政治改革を断行する」と決意を示した。政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕や起訴された場合、離党勧告処分を下せるよう党則やガバナンス・コードなどを改めた。
理解し難いのは、党大会の主眼が「今後」に置かれた点だ。党則などの改正は今回の事件には適用しない。
首相は事件関係議員の処分も「厳しく対応する」とした。ところが、明らかになった処分案では除名や離党勧告は見送る方針だ。最も重い場合で「党員資格停止」となり党内にはとどまれる。数千万円にも及ぶ裏金をつくった議員もいる。甘過ぎないか。
国民が最も知りたいのは還流を誰が指示し、どんな目的に使われたのか、である。こうした処分方針からも、本気で疑惑の核心に迫ろうとする姿勢は見えない。
衆参両院の政治倫理審査会でも、安倍派幹部らは曖昧な弁明に終始した。中でも世耕弘成・前党参院幹事長は、違法性の認識などを巡り、ちぐはぐな答弁を繰り返した。
きのう出席した下村博文氏も同様だ。安倍派会長代理を務め「キーマン」と目された。しかし自身の関与や違法性を否定した。野党が「かえって疑問が深まった」と憤るのも無理もない。
そもそも、党幹部に処分を下す資格があるのかどうかも疑わしい。
処分の結論をまとめる茂木敏充幹事長には、自身の後援会組織に使途の詳細が分からない億単位の支出があった。首相自身も2022年に任意団体が広島市で開いた首相就任を祝う会について「政治資金パーティーだったのではないか」と野党の指摘がある。
こうした「政治とカネ」の問題に、かつてないほど厳しい視線が注がれている。
今月の共同通信の世論調査で自民党の支持率は24・5%。12年の政権復帰以降で最低となった。「支持する政党はない」とする無党派層の31・3%を下回った。自民の体たらくが、そのまま政治不信を招いている。重く受け止めなければならない。
国会での証人喚問や第三者調査など、事件の真相を探る方法はまだ残されている。国民が望むのは自民が真摯(しんし)に事件と向き合い、責任を明確にして厳正な処分を下すことだ。過去にけじめをつけずして、未来を語る資格はない。
自民党大会 改革の決意 実行で示せ(2024年3月19日『山陰中央新報』-「社説」)
自民党改革の決意を繰り返し訴えても、不祥事が度重なる中で、もはや信用されまい。党総裁の岸田文雄首相には、国民が納得する改革の実行こそが求められている。
自民党が東京都内で党大会を開いた。演説した岸田首相は、派閥の政治資金パーティー裏金事件を謝罪し、「先頭に立って党改革、政治改革を断行すると改めて約束する」と表明。前日の全国幹事長会議では「命懸けで党再生に努力したい」とも述べた。
裏金事件を受け、自民党は党則など内規を改正した。その中で政治資金規正法などに抵触する疑いが生じた国会議員は「説明責任を果たさなければらない」と明記。政治団体の会計責任者が規正法違反で逮捕、起訴された場合、議員に離党勧告処分を下せるとし、有罪が確定すれば最も重い除名処分も行えるとした。
首相は党大会で、自身が本部長を務めた党政治刷新本部の「成果の第一歩だ」と強調したが、説明責任は内規に書かずとも国会議員が常に負っているものだ。その自覚に欠けているが故に、国会の政治倫理審査会で安倍派幹部らが巨額の裏金還流の経緯に関し「知らぬ存ぜぬ」の態度を取ったのではないか。党大会後の衆院政倫審で弁明した下村博文元文部科学相も同じだった。
規正法さえ守らなかった議員が明文化したからといって内規に従うか疑わしい。「説明責任の貫徹を促す」と明言した首相の指導力が問われている状況に変わりはないと認識すべきだ。
厳格化した議員処分の在り方についても、同様のことが言える。
会計責任者の有罪確定に伴う離党勧告や除名の処分に対し、「議員が関与するなど政治不信を招く政治的、道義的責任があると認められる時」と前提を付けた。
政倫審では、安倍派幹部らがそろって裏金還流への関与を否定した。それ自体信じ難いが、今後発生した事案で、議員が不関与を主張した場合、処分に踏み切ることができるのか。
処分の認定には慎重な審査が必要とはいえ、言い逃れを許すわけにはいかない。処分の当否を最終的に判断するのは首相であろう。首相は断固たる姿勢で臨み、出した結論について説明を尽くさなくてはならない。
その試金石となるのが、裏金事件での安倍派幹部らの処分だ。首相は党大会で「厳しく対応する」と言明した。改正した党内規の適用外だが、相応の処分でなければ、首相が訴える自民党改革の決意は言葉だけと早々に受け止められよう。
続発する「政治とカネ」問題の再発防止には、党内規のように恣意(しい)的運用の懸念がない政治資金規正法の改正が欠かせない。首相は「今国会で実現する」としているが、党大会でも具体策には踏み込まなかった。
国会論議では、法律上も議員に連帯責任が課せられる連座制の導入、使途公開の義務がないため裏金化が指摘される政策活動費の透明化の是非などが焦点になっている。これらに関わる法改正への取り組みで、首相の本気度を測れるはずだ。
この間、自民党和歌山県連が昨年11月に主催した会合に、露出の多い衣装の女性ダンサーを招いていたことが判明した。言語道断である。同席しながら傍観した国会議員の役職辞任で済まさず厳格に処分すべきだ。
【自民裏金解明】説明責任と処分を明確に(2024年3月19日『高知新聞』-「社説」)
実態解明が進まなければ再発防止策の実効性も高まらない。まだ説明は足りていない。政治不信を引き起こしているとの認識を行動につなげる必要がある。
自民党大会で岸田文雄首相(党総裁)は、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る関係議員の党処分に言及した。政治資金収支報告書の不記載額や役職歴、説明責任の果たし方などを総合的に勘案するという。茂木敏充幹事長に結論を得るよう指示したと述べた。
処分を曖昧にすることは許されず、明確な方針に基づく対処が求められる。首相はきのう、処分前の衆院解散は考えていないと言明した。4月上旬にも80人規模で実施するとの見方がある。先送りしては自らの判断を制約することになる。
処分の判断材料の一つとなる説明責任をどのように評価するのか気になる。衆参の政治倫理審査会に出席したのは、きのうの下村博文氏を含め10人にとどまる。また、疑念を解消するには至らず、説明責任を果たしていないとの見方は自民内からも上がる。首相は自らの出席で状況を動かしたが、解明への強い思いを感じさせなかった。
安倍派では資金還流の中止をいったんは決めたものの復活した。これを巡る幹部協議に関する証言に食い違いが生じている。会長代理を務めた下村氏の政倫審での発言が注目されたが、誰がどう決めたのか全く承知していないと述べるなど、真相解明には程遠い内容だった。幕引きを図れるような状況ではない。
党大会では、今後新たに政治資金事件に関係した議員処分を厳格化する党則や規律規約などを改めた。政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕や起訴された場合、離党勧告処分を下せるようにした。旧来の派閥を禁止し、疑義が生じた議員の説明責任を明記した。
処分は政権内の亀裂を深めかねないとして、党役職停止など比較的軽いものにとどめたいとする声も出ていたようだ。それよりは重い処分で決着したが、身内に甘い姿勢が世論に認められるはずはない。
問われるのは規正法の改正への姿勢だ。現行の規正法では、政治資金収支報告書への不記載や虚偽記入の処罰対象は会計責任者で、議員本人の刑事責任には具体的な指示や了承の立証が求められる。厳格化、厳罰化を求める意見は根強い。
議員が違法行為に直接関係していなくても連帯責任を負わせる公選法の連座制のような仕組みが取り上げられる。首相は規正法改正を今国会で実現する意欲を繰り返し述べている。その熱意を取り組みに反映できるかが分かれ目となる。
旧来派閥の禁止も、人事や選挙への影響力を排除するために必要なのは間違いないが、復活や抜け道を阻止する方策を明確にしなければ意味はない。見せかけの対応にとどまれば政治不信は一段と強まる。重要なのは「政治とカネ」の透明性を高めることだ。緊張感を欠くような対応では支持は得られない。
スピーチ(2024年3月19日『高知新聞』-「小社会」)
岸田文雄首相の政権運営について森喜朗元首相に聞く記事が昨年の夏、本紙に載った。いま読み直しても、その発言につい笑ってしまう。
2人は早稲田大学の出身。少し前に母校で岸田氏の講演を聞いたという森氏が「大観衆の割に学生から拍手が湧かなかった」と内容を駄目出しして、こう助言した。「もう少しスピーチに気を付ければ人気が高まる」
後輩への愛情だったのだろう。ただ、二十数年前、自民党議員の不祥事に加え、「日本は天皇を中心にした神の国」などの問題発言が相次いだ。内閣支持率は1桁台に沈み、就任1年余りで退陣を余儀なくされたのは、ご自身だったのでは。政界引退後も不用意な発言癖が目立った。
その森氏が退陣に際し、実績として誇ったのが日ロ首脳会談だった。このほど通算5選を確実にしたプーチン大統領が初当選したのは森氏の首相就任と同じ2000年。それもあってか、2人は森氏の短い在任期間中にも互いの国を訪問し合い、その後も親交が続いた。ならば巧みなスピーチでプーチン氏を諭してみては。戦争をすぐやめるように。
森氏に求められる大きな役目がいま国内にもある。東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件に自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件。いずれも森氏の名前が出てくる。
こちらも自慢のスピーチで国民に真相を語ってほしい。いや語るべきだろう。真相の「爆弾発言」なら歓迎する。
裏金議員処分へ 実態解明が信頼の前提だ(2024年3月19日『熊本日日新聞』-「社説」)
岸田文雄首相(自民党総裁)がどれだけ謝っても、政治への信頼を回復できるわけではない。国民が知りたいのは、派閥の政治資金パーティーによる裏金づくりの実態、裏金の使途だ。国会や党内で説明を尽くさない安倍派と二階派幹部の責任逃れは目に余る。首相は裏金の真相を徹底解明し、厳しい処分を科さなければならない。
党大会の演説で、首相は「国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こしている」と謝罪し、政治資金規正法の改正を今国会で実現すると強調。裏金に関わった議員に対しては「説明責任の貫徹を促す」と述べ、党として処分を検討する方針を示した。
検察の捜査終結から2カ月がたった。首相はことあるごとに「先頭に立って政治改革を断行する」と決意を示すが、説明を促した成果は乏しい。裏金づくりがいつ始まり、誰が指示し、何に使われたかを解明できずにいるのは、党首の指導力不足だろう。処分が遅れているのも、そのためだ。
首相は、議員の処分に▽政治資金収支報告書の不記載額や役職歴▽説明責任の果たし方-などを踏まえるとした。その前提として全ての関係議員に説明を強く迫るべきだ。その調査結果を速やかにまとめ、処分内容を含めて公表する責任がある。派閥幹部らが自浄能力を欠く場合、相応の処分でなければ党改革の決意が疑われよう。
衆参両院が開いた政治倫理審査会でも派閥幹部の対応はそろって不誠実だ。報告書に記載しなかったパーティー券の販売ノルマ超過分が議員側に還流する仕組みに「関与していない」「知らなかった」と繰り返した。国民の疑念に応えるには、偽証罪に問われることもある証人喚問が必要だろう。
昨日の政倫審には、安倍派の会長代理を務めた下村博文元文部科学相が出席したが、ほかの幹部と大差ない発言に終始した。
還流中止を指示した安倍晋三元首相の死去後、還流を再開した経緯については、誰が提案したのかすら不明なままだ。幹部4人と会計責任者の協議から2年もたっていないのに、誰も覚えていないとは不自然ではないか。
先週の政倫審では、改選対象の参院議員に全額を還流するルールについて、世耕弘成前参院幹事長は「私には何の相談もなく、勝手に決まっていた」と述べた。裏金を選挙費用に回したかを問われると、根拠も示さず「あり得ない」と言い切った。
自民党則などの改正では、会計責任者の有罪が確定した議員の処分を厳格化。政治とカネの疑惑が生じた議員に説明責任を課すと定めた。派閥を禁じつつも「政策集団」としての結集を認めるなど、実効性に疑問が残る内容だ。
今後も規正法への連座制導入、企業・団体献金の禁止、使途を記載しない政策活動費の透明化など論点は山積する。森喜朗元首相や派閥の会計責任者らに説明を求める機会も必要だ。自民党が踏み込んで対応しなければ、国民の不信感はさらに膨らむに違いない。
裏金と安倍派幹部 真相解明の証人喚問を(2024年3月19日『沖縄タイムス』-「社説」)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆参で延べ4日間にわたり政治倫理審査会が開かれた。
しかし、誰がいつ始めたのか。なぜ還流は続いたのか。疑念は解消されるどころか深まるばかりだ。
18日は衆議院の政倫審に、安倍派の事務総長を務めた下村博文氏が出席した。
安倍派は2022年に資金還流をいったんやめ、後に復活させた。下村氏は還流の扱いについて話し合われた派閥幹部らの協議に参加しており、発言が注目されていた。
ところが「知らぬ存ぜぬ」の繰り返しで、納得できる説明はなかった。
還流復活の経緯について、派閥座長を務めた塩谷立氏は今月の政倫審で、復活させる方向で話し合ったと説明していた。一方、事務総長だった西村康稔氏や参院側会長だった世耕弘成氏は「結論は出ていない」としており証言に食い違いが出ていた。
これに対し下村氏は、還流に代わり議員個人のパーティー券を派閥が購入する案が出たとしたものの、「誰が最初に言ったのかは覚えていない」と明かさなかった。
還流が始まった経緯に元会長の森喜朗氏の関与があったかどうかについても「そういうことがあったことも承知していなかった」と人ごとのようだ。
それどころか派閥の幹部でも、政治資金の経理や会計についての報告は「全くなかった」とした。まるで事務局の独断で還流が行われてきたかのような発言で、にわかに信じ難い。責任逃れの姿勢が目に余る。
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裏金事件を受け、参議院でも初めての政倫審が開かれた。世耕氏、西田昌司元政調会長代理、橋本聖子元五輪相の3人が出席したが、ここでも実態解明には程遠いやりとりが続いた。
特に安倍派の実力者「5人組」の一人、世耕氏は当事者意識の欠如をあらわにした。
安倍派は、参院では改選対象の議員にパーティー券の販売ノルマ分と超過分を合わせ全て還流させていた。参院を取り仕切る世耕氏は把握してしかるべきだが、「勝手に決まっていた」という。
これには、続いて登壇した西田氏が「(世耕氏答弁は)みんな納得できない」としたのも当然だ。
同じく「5人組」の萩生田光一前政調会長は、政倫審に出席すらしていない。「党の判断に従った」と釈明するが、派閥の決定を盲信した結果の「裏金」ではないか。
後ろ向きな姿勢から反省の意はうかがえない。
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岸田文雄首相は裏金に関係した党所属議員の処分について「通常国会中に判断することを考えている」と述べた。
自民党大会では、政治資金規正法などに抵触する疑いが生じた議員の処分を厳格化するなど党則など内規も改正された。裏金事件について党としての処分は当然厳しくあるべきだ。
一方、国民への説明責任はいまだに尽くされていない。政倫審で解明されないのなら、衆参それぞれで証人喚問しかない。
「声」を求めず封殺した自民は首相会見を取り止めた中国全人代と同じ(2024年3月19日『日刊スポーツ』-「政界地獄耳」)
★衆参の政倫審後の自民党内の声を聴いていると、政倫審に出席した安倍派幹部の発言や振る舞いなどへの批判が多く聞こえてくる。15日、同党参院議員・三原じゅん子は前参院幹事長・世耕弘成を念頭に「幹部という立場にあったのだから真相究明のため必死に汗をかき、その結果を国民に報告、説明を果たし、その上で自ら政治的責任を取るというのが本来の在り方なのではないだろうか」と、X(旧ツイッター)に筋論を書き込んだ。
★自民党大会前日の16日に開かれた全国幹事長会議や全国政調会長会議でも、地方議員から「政治的責任と言いながら誰も責任を取っていない」「生まれ変わると言ってもけじめをつけていない」など、ぬるい対応に終始している執行部を批判した。もっとも早々に幹部の処分を“重め”に出したとしても批判はあったろう。このぬるめにだらだら低空飛行を続けるのが最善と党執行部や官邸は決めたか。だが、17日の党大会を1つのけじめや区切りにするもくろみも崩れたといっていい。党規約改正はザルばかり、派閥は勉強会と称して存続し、一体何が変わり何が厳しくなったのか党内でもわかりにくい。それどころか、正面から生まれ変わる党を見てほしいという考えは持ち合わせなかったようで、党は異例にもメディアを絞り込み、国民政党の正々堂々さを捨てコソコソさを選択した。これでは逆効果であろう。
★今月は中国で全人代が開かれた。全人代閉幕後の首相記者会見は30年以上続くものだが、直前に報道官は首相会見を行わないとし、「特別な事情」がなければ今後も「数年間行わない」とした。自民党も全人代も「声」を求めず封殺したことでは同様だろう。党内の党批判も表層的で、党を揺るがすような批判よりも“こんなことをして私の選挙をどうしてくれるのか”が多く、目先の自分の生き残りに有利かどうかの判断ばかりで、この政治とカネを遠くから降ってきた火の粉のような扱いだ。党員も県連役員の県議らも国会議員も、本当に自民党を守り、変える気概も覚悟もなかった。(K)