「清流のアユ」が世界農業遺産に認定されている
長良川で、北
米原産の
特定外来生物、
コクチバス=写真、
岐阜県提供=が相次ぎ見つかった。肉食で繁殖能力が高く、アユなどの生態系を脅かす恐れが高い。
岐阜県は、国内の成功例がないとされる河川での「完全駆除」に乗り出した。
岐阜県内では、伊自良湖(
山県市)で20年ほど前に初めて見つかったが、その際は水抜きをして駆除に成功。しかし、ここ数年、
揖斐川や
木曽川で見つかり、
長良川でも昨年5月、
美濃市内で初めて確認された。岐阜や
郡上市でも報告が続くなど、アユ漁や鵜(う)飼いへの影響が危惧されている。
本来そこにいなかった
外来種が「人の手」で持ち込まれ、生態系のバランスが崩れる例は少なくない。例えば
アメリカザリガニやアカミミガメにより日本固有のザリガニやイシガメは駆逐された。
コクチバスなどの
特定外来生物は輸入や販売、野外への放流が禁じられ、違反者には懲役刑や多額の罰金が科せられる。いったん自然界に繁殖を許してしまうと完全駆除するのは至難の業だ。
岐阜県は昨年末、漁協や
自治体とも連携し、網漁や水中に電流を流して気絶させ駆除したり、釣り客から1キロ2千円で買い取ったりと、大がかりな対策を決めた。来月から年1億円を投じて2025年度中の完全駆除を目指し、さらに
木曽川や
揖斐川にも対象の範囲を広げるという。財政面や費用対効果を勘案し、抜本対策がとれていない他地域にも参考となろう。
外来種による駆逐など
生物多様性の損失を食い止め、人の行動で回復させることを「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と呼ぶ。国際会議で採択され、国内にも広がりつつある。
生物多様性損失への危機感を共有する機会にもしたい。ただ、生き物である以上、繁殖しようとするのは自然の摂理である。
外来種の問題は、人のエゴや経済活動の結果だということも忘れたくはない。