文化ツーリズム 地域財産見つめる機会に(2024年3月22日『佐賀新聞』-「社説」)

 

加藤清正福島正則の陣跡を示すサイン=唐津市鎮西町の国道204号沿い

 

 唐津市玄海町一帯の国特別史跡名護屋城跡並びに陣跡」。豊臣秀吉ゆかりの「黄金の茶室」再現をはじめ、戦国時代をテーマにするゲームとコラボした周遊サイン(看板)も今冬に設置された。調査研究に加えて近年、政府も力を入れる文化ツーリズム。地域振興にどうつなげていくか。その道筋に注目したい。

 佐賀県が2020年度から取り組むプロジェクト「はじまりの名護屋城。」。朝鮮出兵文禄・慶長の役)の際、全国から名だたる武将が集まり、陣跡は150カ所以上、城下の人口は20万人を超えたとされる。当時の大坂に代わる“首都”で、茶の湯や能など桃山文化が花開き、今に伝わる伝統文化の「はじまりの地」を打ち出す。

 周遊サインでコラボしたのは、人気歴史シミュレーションゲーム信長の野望」だ。陣跡を示す地には、武将のグラフィックを描き、エピソードや陣跡の豆知識を掲載した13基を設置。徳川家康前田利家石田三成など16人を紹介する。このほか高さ7メートルの大型歓迎塔や総合案内、陣跡解説サインなど合わせて63基を配した。

 さらに周辺の交差点の名称に武将の名前を採用。これまで「伊達政宗陣跡」はあったが、「風呂尾呂→加藤清正陣跡東」「波戸岬少年自然の家入口→真田昌幸陣跡」など6カ所で変更した。これら歴史の専門知識はなくても多くの人に親しまれ、分かりやすく地域が持っているストーリーや魅力を伝えることは重要だ。

 政府は文化財の観光活用を推進している。2019年の改正文化財保護法は保存重視から活用も求め、翌年には文化観光推進法が施行された。財政支援があり、全国で認定を受けた計画は51地域・拠点(23年9月現在)。根幹の趣旨は、文化資源を生かした観光で経済効果につなげ、それを文化に再投資、還元しようというものだ。保存、継承は地域社会の存続があってこそだ。

 その「好循環」をどう生み出していくか。「データがあるかないかでアイデアの出し方が違う」。一般社団法人「VISITSAGA(ヴィジットサガ)」の善田浩介代表はそう話す。DX化を進める団体での活動をきっかけに昨年10月、唐津市内の事業者ら4人で法人を立ち上げた。

 昨秋には市内を訪れた観光客を対象にウェブアンケート(回答1021人)を行い、来訪理由や交通手段、滞在日数、検索ワード、宿泊や食事の満足度などを調べた。「まず『お客さま』のことをとことん知ることから」。スマートフォンでは個々人のデータを収集でき、行政や関係団体などとも共有しながら「訪れたい・住みたい街」づくりの戦略を巡らす。

 23日には今年で3回目になる名護屋城大茶会を開催。秀吉が日常愛用した「草庵茶室」も復元し博物館で公開が始まる。新年度からは5カ年をかけた前田利家陣跡の整備なども予定。県文化課は「ハード面など仕掛けづくりは進んできている」。訴求力を高めるためにも地域に息づく財産をあらためて見つめ直したい。(松田毅)