手話ってな~に? 紙芝居で(2024年3月22日『読売新聞』)

ろう者の存在 身近に感じて

 ろう者の存在や手話についての知識を深めてもらおうと、県聴覚障害者福祉協会(岡山市北区)が、幼稚園や保育園児を対象にした紙芝居を作成した。未就学児向けの教材は初めてで、手話の出前講座で活用する。(中安真人)

紙芝居を使って手話について講義をする庄田さん(左)ら(岡山市北区で)
紙芝居を使って手話について講義をする庄田さん(左)ら(岡山市北区で)

聴覚障害者福祉協 未就学児向けに作成

 「かくれんぼをしていても『もういいかい』の声は聞こえません」「後ろから友達を呼んでもわかりません」

 5日、ひらたえがお保育園(同)で開かれた出前講座で、同協会の庄田正子・手話対策部長と手話通訳者が、手話を交えながら園児約30人に紙芝居を読み聞かせた。

 紙芝居は「きこえないってな~に? しゅわってな~に?」と題した全9枚。耳の聞こえない小さな男の子「たろうさん」が友達と手話をしたり、友達がかくれんぼや歌って遊んでいる中に入れずに困っていたりする様子を描き、耳が聞こえない人の気持ちや、手話について伝える物語だ。

 同協会ではこれまで、小学校高学年向けのハンドブックを使って出前講座を開いてきた。小さい時から手話を学ぶ環境を作ることで手話やろう者の存在を身近に感じてもらおうと、低年齢向けの教材作りに着手し、1年弱をかけて完成。庄田さんは「音が聞こえない人とどう仲良くなればいいかを学べる内容にした」という。

 紙芝居は、同時期に完成したハンドブックのDVD版とともに子ども向けの出前講座で使用する。講座では、実際に手話を教えることもある。庄田さんは「小さい年代から手話に触れることで、手話が言語として当たり前になる社会になれば」と願っている。

学ぶ機会の確保を 通訳者不足課題

 県では2022年に手話言語条例が成立した。条例の目的の一つとして「手話を学ぶ機会の確保」がうたわれており、今回の出前講座もその一つだ。

 ただ、手話通訳者の数は十分ではない。民間資格の手話通訳者は社会福祉法人「全国手話研修センター」の全国統一試験の合格者で、講座での講師や日常生活での通訳も実施する。

 厚生労働省が21年に全国の登録手話通訳者に調査した結果では「登録する自治体で通訳者の人数が足りている」と回答したのは全体の18・8%にとどまる。県内では近年は増加傾向だが、高齢などの理由で活動をしていない人も含まれる。県聴覚障害者センターの聞き取りでは、県全域で活動しているのはここ数年、110人ほどだという。

 地域格差も課題だ。センターによると、登録者の大半は岡山、倉敷市など県南部だという。市町村が雇用する専任手話通訳者もここ数年は伸び悩み、新見市では数年前から募集をしているが、応募ゼロが続く。

 センターでは養成講座を県内各地で開き、通訳者の担い手を探している。担当者は「通訳を必要とされる方が安心して暮らせるように取り組みを続けたい」と話している。