青森市議・相馬さん、手話で一般質問 経験生かし「開かれた議会に」(2024年3月15日『東奥日報』)

青森市議会で手話を交えて一般質問を行う相馬さん=4日


 青森市議会議員の相馬純子さん(64)=共産党=が、市議会を傍聴するろう者に向けて、議場で手話を交えた一般質問を行っている。ろう学校勤務で習得した手話を議員活動に生かし「全ての人に開かれた市議会にしたい」という。

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 4日の市議会本会議。「学びたい人の切実な思いに応えられないか」。相馬さんは壇上で市幹部に対し、夜間中学の設置に向けた検討を行うよう手話を交えて要望した。教育を受ける機会に恵まれなかったろう者や不登校の子どもらを念頭に、学び直しの場を設ける必要性を訴えた。

 手話による一般質問では、質問内容を文書にまとめるほかに、難解な言葉の手話表現を調べたり手話を練習したりするなど、準備に5日ほどかかるという。身ぶり手ぶりで伝える分、口話よりも時間を要するため、内容をコンパクトにするよう心がけている。

 高校時代、障害のある人と文通した経験がきっかけで養護教諭を志した。大学卒業後、新任教員としてろう学校に着任。ろう教育の現場で専門知識を学び続け、青森聾(ろう)学校長や県聴覚障害者情報センター所長などを歴任した。

 ろう学校勤務時、障害に関する相談体制の充実などを行政に要望したが、なかなか声が届かず、一教員の力には限りがあると感じた。その思いもあり退職後の2022年、市議選に出馬し初当選。「議会を傍聴するのは健常者だけではないから」(相馬さん)と、翌年2月の定例市議会から手話で一般質問を行うようになった。

 手話の質問には苦労もあるが、インターネットやケーブルテレビの市議会中継を見るろう者の知人の励ましが力になっているという。「ろう者の中には議会中継の内容が理解できず、政治を遠い存在と感じる人もいる。全ての人に開かれた議会であってほしい」と強調する。

 1月の能登半島地震ではその思いを一層強くした。障害のある人が、災害時に必要な情報や支援が届かない「災害弱者」にならないよう、市議会など防災を議論する場に当事者の声をもっと反映させる必要があると感じた。全国に目を向ければ、議会中継の手話同時通訳を行っている地方議会もある。「いずれは青森市でも実現させたい」と意気込みを語った。

 

相馬 純子(そうま・じゅんこ)

青森市会議員(1期目)
1960年1月生まれ
弘前大学卒業。
県立青森聾学校長、県聴覚障害者情報センター所長を歴任。
所属委員会:文教経済常任委員会、雪対策特別委員会