◆自治体が公共空間を商業的に活用する動き
「コモンズネット」共同代表のロッシェル・カップさん(左)と原和加子さん(森本智之撮影)
外苑の再開発で多数の樹木が伐採されることが明らかになった2022年2月以降、カップさんは再開発の見直しを求めるウェブ署名を始めた。交流サイト(SNS)で情報発信するうち、全国で開発に直面している住民から連絡をもらい、交流するようになった。
カップさんは「自治体自らが公共空間を商業的なスペースに変えようとし、市民が反対しても無視する。それが典型的なケースの一つ」という。公園整備の予算不足が全国の自治体の課題となっており、民間委託は各地で進んでいる。民間の力を生かして行政コストを減らす「官から民へ」の一環で、過剰開発の背景にはこうした動きなどがあるとみている。ただ住民運動の多くは手弁当で人材や資金にも限りがある。共に外苑の反対運動に加わっていた原和加子さんが「つながれば、少しでも声が大きくなるんじゃないか」と連絡組織を提案した。
◆神戸では反対の声が市に聞き入れられず
パンダが有名な動物園のある、神戸市の王子公園では「都市ブランドの向上」などを目的に、市が公園全体の約2割、3.5ヘクタールを削除し、大学を誘致。その過程で樹木が伐採される。「王子公園・市民ミーティング」の小林るみ子代表は「何度も神戸市に申し入れ、署名も議会の請願も行ったが対応は変わらない。連絡組織は、大きな存在。力を借りたい」と話す。
◆京都では計画見直しにつながったケースも
「コモンズネット」の第2回会合ではオンラインで全国と結び、参加団体が活動状況を報告し合った=東京都中央区で
今年で創立100年となる京都府立植物園(京都市)でも「躍動する祝祭空間」を目指し、商業施設を建設したり、隣接地に1万人規模の巨大アリーナを建設する計画が20年に浮上した。ただ反対運動により府は計画の内容を見直し、アリーナも今月に入って別の場所に建設することで決着した。「京都府立植物園整備計画の見直しを求める会」の鰺坂学共同代表は「活動を横に広げる意味はすごく大きい。私たちが集めた16万筆以上の署名のうち、3分の1は関東をはじめ全国から集まった」と強調。「活動を始めたころは計画を変えるのは難しいと思っていた。全国でコモン(共有財)を守る運動の一助になりたい」と話す。