老朽化やバリアフリー設備の不足が課題となっている東京都立葛西臨海水族園(江戸川区)の建て替えで、都が計画敷地内の樹木1700本のうち600本を伐採し、800本を移植する方針であることが分かった。新施設の建設に「自然との共存」を掲げ、これまで「樹木への影響を極力減らす」と説明してきた。都民や都議会からは「自然環境を安易に破壊しないで」と見直しを求める声も上がる。(三宅千智)
建て替えが計画されている葛西臨海水族園
葛西臨海水族園 1989年6月開園の葛西臨海公園内にあり、89年10月にオープンした。約2200トンのドーナツ型の大水槽で群泳するクロマグロや、自然が豊かだったころの東京周辺の水辺を再現した「水辺の自然」エリアが特徴。新水族園では、巨大水槽を約3千トンにする。整備事業は2022年8月、NECキャピタルソリューションなどのグループが約431億円で落札した。
◆樹木医の診断から「移植に適さず」
都によると、現水族園本館の北側に地上2階、地下1階の新たな本館などの整備を計画する敷地(約3万6000平方メートル)には、1700本の樹木がある。2023年3〜11月、樹木医が樹木の状況を調べた結果、病気による倒木や枝折れの危険性があったり、移植しても枯れたりする可能性が高い樹木が計400本確認された。
都は、これらを「移植に適さない」と判断し、生態系に悪影響を及ぼすナンキンハゼなどの外来種200本と合わせ、計600本を伐採する。残る1100本のうち300本は保存し、800本は、新たな水族園近くに設ける広場「共生の杜(もり)」などに移植する。広場には、別の樹木も植える。
現水族園は、米国・ニューヨーク近代美術館(MoMA)を手がけた世界的建築家の谷口吉生さんが設計。かつて谷口さんの事務所に勤め、水族園の設計にも携わった建築家の村松基安さん(67)は「もともと埋め立て地だった場所から、税金を投入し、豊かな自然環境に再生させたことは都の功績」とした上で、「生態系を破壊する計画は自然との共存と言えないのではないか」と訴える。
◆「ガラスドーム」は保存決定
都側は、これまで都議会などで「新施設は樹木の少ない芝生広場を中心に建設し、支障となっている樹木は移植を前提に設計を進める」と説明してきた。2月14日の都議会環境・建設委員会では、都議から「樹木への影響を極力減らすような配慮がどこでされたのか見当たらない」「既存の樹木を最大限残す整備を」などの指摘が相次いだ。
都建設局の担当者は取材に「整備の影響を受ける樹木はできる限り共生の杜などに移植し、緑の保全にも配慮していく」と話した。
また都は、現水族園のシンボルで高さ約20メートルの「ガラスドーム」を、28年3月に予定する新水族園の開園後も保存することを決めた。建築家などの有識者と意見交換し、具体的な活用の仕方を決める。
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